中国による「氷上シルクロード」計画
中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」に関しては、以前に当メルマガで取り上げました。
「一帯一路」には、「陸のシルクロード」と、南シナ海を通って南下する「海のシルクロード」があります。そして実はもう1つ、地球温暖化で氷が解けており、船舶の通航や資源開発が容易になった北極海で権益拡大をめざす「氷上のシルクロード」計画があるのです。
中国外務省は2018年1月26日、白書「中国の北極政策」を発表し、北極海における天然資源や新航路の開拓に意欲を示しました。
これまで北極圏の開発は、沿岸国のアメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマークが中心となってきました。そこに中国が、新たに参入してきたのです。
中国は白書で「北極圏に最も近い国の1つ」と自国を位置づけ、経済や環境など幅広い分野で北極の利害関係国だと明示しています。具体的に「企業が北極海航路のインフラ建設や商業利用に参加することを奨励する」「企業が石油や天然ガス、鉱物資源の開発に参加することを支持する」と盛り込んでいます。
中国が狙うのは「グリーンランド」
中国が狙いを付けているのが「グリーンランド」です。
国土の大部分が北極圏に属するグリーンランドは、デンマーク領ですが、自治政府があります。日本のおよそ6倍の面積がある世界最大の島ですが、人口はわずか5万6,000人ほどで、国土の80%以上が氷に覆われています。
その氷の下には、希少資源のレアアースなど豊富な天然資源が眠っていることが確認されています。
中国は、グリーンランドへの投資を加速しています。
実は北極には、平和利用を定めた南極条約のような国際ルールがまだ整備されていないのです。新たな国際ルールは、米国やロシア、デンマークなど8つの北極圏国で構成する「北極評議会」が議論を主導していて、中国は2013年に日本や韓国などとともにオブザーバーとして議論に参加しました。
北極圏の活用策や課題を議論する国際会議「北極サークル」の場では、中国は、伝統舞踊や豪華な中国料理で参加者をもてなすほどの力の入れようです。中国はアイスランドのオーロラ観測所にも資金提供するなど、さまざまな分野での投資を北極圏の国々に対して行い、地域での存在感を高めています。