引きこもりは「長期失業者」
本質的には、引きこもりは「長期失業者」として把握すべき対象なのだろう。
「長期失業者」が大量に発生して滞留している原因は、賃金が安すぎるからであり、雇用が不安定だからであり、人として生きられない労働環境になっているからである。
働きに出ても、そこにはブラック企業が口を開けて待っている。ブラック企業の罠に捕まったら、善人ほど身も心もボロボロにされて立ち直れなくなる羽目に陥る。ブラック企業の餌食になるより、家に籠もっていた方が安全だというのは正しい護身の選択だろう。ブラック企業の経営者に対する処罰はなく、今ではデフォルトのようになって横溢(おういつ)している。
退職するのに弁護士が必要などと、われわれの昔の常識からは考えられないことだが、今ではそんな現実が当たり前のように語られている。この20年ほど、就職と労働の問題がどれほど人を傷つけてきたことか。
それにもかかわらず、日本人はまるで拒食症の重症患者のように、ネオリベ政権を熱狂的に支持し続け、もっとネオリベの労働政策をやってくれと望み、テレビで「働き方改革」を宣伝し、昨年は高プロ(残業代ゼロ)と移民法を成立させた。
人しか資源のない国なのに、人を傷つけ、人を卑しめ、労働者としての能力を低下させ、国の競争力を低下させている。
「引きこもり」という言葉を変えるべき
10年ほど前、本田由紀氏が「ニートって言うな」と言っていたことがある。
ニートという言葉もよくないが、引きこもりという言葉もよくない。言葉から変えたらどうだろうか。
誰も引きこもりになりたくて引きこもりになったわけではない。この言葉は差別的だし、悪意があるし、社会的矛盾の犠牲者や被害者の責任をその本人に帰する自己責任視点の言葉だ。経済学の問題を社会学の問題にスリカエて、問題を茶化す言葉だ。
引きこもりという表現が妥当なのか、それを言われる側の心理はどうなのか、それを言う者と言われる者の関係性はどうなのか、事象と言説の根本に立ち帰って考え直す必要がある。
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『世に倦む日日』(2019年6月3日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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