fbpx

米中貿易戦争は一時休戦、次はトランプの大本命「ロシア」のエネルギー産業叩きへ向かう=高島康司

報告書の結論:ロシアのエネルギー産業の弱体化

まず報告書は、ロシアの脅威を抑止しなければならないが、その目標を実現するためには、ロシアと軍事的に対抗するのは得策ではないとしている。ロシアの強みは軍事力と情報戦にあるので、この分野でアメリカが対抗すると、アメリカも大きなコストの負担を覚悟せねばならず、むしろアメリカのほうが音を上げる可能性が大きいとしている。

これを避けるためには、軍事的に対抗するのではなく、ロシアの財政を拡大させ、経済的に破綻させる戦略がもっとも有効だとしている。

ロシアにコスト負担を強いる方策を、以下の6分野で考察。

1)経済分野
2)地政学の分野
3)イデオロギーと情報の分野
4)航空と宇宙の分野
5)海洋の分野
6)陸上の分野

このなかでアメリカの負担がもっとも少なく、ロシアには最大の負担を強いることになるのが、ロシアがもっとも弱い(1)の経済分野だとしている。

そして特に、ロシア経済の依存度が際立って高い原油天然ガスなどのエネルギーの分野でロシアを締め上げるのが、アメリカの負担がもっとも小さい効果的な方法だとしている。

そして、ロシアのエネルギー産業にとっての最大の市場はヨーロッパなので、アメリカがシェール・オイルやシェール・ガスなどのヨーロッパ輸出を拡大させ、ロシアの経済的弱体化を狙うべきだと主張する。

ヨーロッパのエネルギー覇権の戦い

これが今回の報告書の内容である。いまのロシアはヨーロッパのエネルギー覇権を確立するために新しいパイプライン網の付設に余念がないが、これを阻止したいトランプ政権との間で緊張が続いている。

しかし、今回の「ランド研究所」の報告書を見ると、これからはトランプ政権による、ヨーロッパのエネルギー市場からロシアを徹底して排除する動きがいきなり始まる可能性を暗示している。

ちなみに、以下がロシアはいま建設中のヨーロッパに向かう天然ガスのパイプライン計画だ。

1)ノルド・ストリーム
バルト海底を経由してロシア・ドイツ間をつないだ天然ガスのパイプライン。2011年11月に稼働を開始している。いま、ロシア国営企業、「ガスプロム」とドイツ、フランスなどの企業が出資する新たなパイプライン「ノルド・ストリーム2」が、2019年の完工を目指している。

2)ターキッシュ・ストリーム
ロシア南部クラスノダール地方から黒海海底を通りトルコ・イスタンブール近郊まで到達する天然ガス・パイプライン計画。2018年に建設を開始し、19年に運用開始予定。トルコを通過し、さらにギリシャへ抜ける構想だ。その後、ギリシャを経由してヨーロッパの他の地域に天然ガスを供給する。

3)フレンドシップ・パイプライン
イランの天然ガスをシリア、イラク、レバノンを通って地中海からヨーロッパへと運ぶ1500キロのパイプライン計画。2011年に建設が始まったものの、シリア内戦で中断している。アサド政権の存続が決定しているので、情勢が落ち着き次第、建設が始まるかもしれない。

Next: ロシアと欧州のパイプラインを絶対阻止?次に向けて中国とは休戦か

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー