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景気悪化に日銀も打つ手なし。刺激策のはずのマイナス金利が経済を冷やしている=斎藤満

主要国の長期金利が低下し、各国で副作用が出ています。特に日本は八方塞がりで、本来は景気刺激策であるはずの利下げが逆に景気を冷やしている状況です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年6月5日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

利上げも利下げもできない、完全に行き詰まった日本の景気刺激策

意図しない金利低下

主要国の長期金利が低下しています。

6月3日のニューヨークでは米国の10年国債利回りが2.074%まで低下、政策金利のFF金利ターゲット(2.25-2.5%)を下回る「逆イールド」が発生しています。

4日のアジア市場では日本の10年国債がマイナス0.104%で、3か月物のマイナス0.15%に迫るマイナス幅です。

ドイツの10年国債はさらに低く、マイナス0.204%となっています。

世界経済が不安視され、景気刺激策が求められる状況になってきましたが、これら長期金利の低下は、必ずしも中央銀行が意図して下げているわけではありません

長期金利をコントロールできていない

米国の中央銀行FRBは今年の金利引き上げは忍耐強く見送ると言っていますが、利下げを意図してはいません。それでも昨年10月に3.2%台を付けた10年国債利回りは1%以上も低下しています。

FOMC(公開市場委員会)の議事要旨によると、FRBはいずれ来る景気悪化局面で、政策金利をゼロまで引き下げたあと、さらに緩和が必要なら日本に倣って長期金利を下げる金利コントロールを行うため、今のうちに保有資産を短期国債にシフトしておき、来るべき時に長期国債を買い上げて長期金利を引き下げ、緩和効果を期待するとしています。

つまり、今はむしろ長期国債を売って長期金利を上げても良いと見ています。

日銀は昨年7月に長期金利の変動幅を従来の2倍に拡大し、下はマイナス0.2%まで容認する建前ではありますが、特に金利を下げようとしているわけではありません

物価の実績が安定的に2%以上になるまでマネタリーベース(MB)を拡大する、と明言しているため、国債の買い入れを続け、MBを増やしていますが、国債の買い入れ規模は建前上の「年間80兆円をめど」に対して最近は金利が下がりすぎないよう30兆円未満に留めています。

欧州中央銀行(ECB)も昨年末でドイツ国債などの資産買い入れを停止し、今後は利上げのタイミングを模索する段階に入っていますが、景気が思わしくないので、当面利上げは視野にないとしても、金利を下げる意図はないはずです。

つまり、FRBも日銀もECBも長期金利を下げようとしているわけではないのに金利が低下しているわけで、長期金利をコントロールできていないことになります。

Next: マイナス金利の日本は景気が悪化中。各国に低金利の副作用が出始めた…

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