疑わしい景気刺激効果
FRBは政策金利が依然として低く、将来の景気悪化時に利下げ余地が小さい分長期金利の引き下げも景気刺激策として利用したいとしていますが、その長期金利はこの半年で1%も低下しています。
しかしこれが米国景気を刺激しているのか、大いに疑問があります。確かに住宅ローン金利は下がり始めていますが、住宅需要は景気を刺激するほど強くはありません。
長期金利がマイナスになっているドイツや日本はどうかと言えば、いずれも景気はむしろ悪化方向にあり、これを反映して金利が下がっている面があり、金利低下が景気を下支えしている状況は見えません。
日銀内には追加緩和が必要な際には、長期金利をさらに引き下げる策を検討する向きがありますが、ここまで金利が下がっていても、景気を刺激する動きは見られません。
通説でも引き締めとしての利上げは効果的だが、緩和のための利下げは効果が限られる、となっています。米国では緩和による景気刺激に対して「糸で押すようなもの(つまり効果がない)」と言われます。
各国に副作用
むしろ長期金利の低下は各国に大きな副作用をもたらしています。
米国では長期金利の低下によって長短金利が逆転する「逆イールド」が発生し、景気刺激どころか、これが1年以内の景気後退の可能性を示唆しています。
長期金利の低下は一面で株価にはプラスの面がありますが、逆イールドになって近い将来の景気後退が示唆されると、業績悪化懸念で株価も押し下げます。
当局としては、将来の経済危機に備えて、景気が堅調なうちに政策金利を引き上げておきたいとの思いがありますが、長期金利の低下によってこれが阻まれています。むしろ逆イールドによって利下げを余儀なくされる面すらあります。
日本では短期金利から満期10年までの国債がすべてマイナス金利になっています。このため、金融機関は貸出、債券運用ともに十分な利ザヤが取れず、収益が圧迫され、経営危機に陥る金融機関も少なくありません。
生き残るために、スルガ銀行のように、比較的貸出金利が高くとれる不動産融資に傾斜しがちになり、市場をゆがめ、銀行資産のリスクも大きくなります。