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金価格の現在はどんな状況といえるのか?長期的なトレンドでは4~6倍に上昇する=吉田繁治

金価格が上がった短期の要因(2019年)

きっかけは、2018年央のトランプが仕掛けた対中国関税でした。関税を課すことは、貿易量を減らします。特に中国は、経済成長を主導してきた輸出量が減ります。そうすると、「元安」になる。元安の回避のために、中国から金の購入が増えたのです。これによって、金価格の上昇が始まります。

2018年10月から12月

2018年の10月から12月は、米国株の下落でした。直接の原因は、2018年9月と12月の「ドル緩和の出口政策」としての、「0.25%×2回~0.5%」の利上げです。米ドル緩和の停止ということから、まず株価が下がった。米国株の18年12月24日までの3か月の下げは20%という大きなものでした。

米国の株の総時価は、ドルの増刷と低金利社債の発行による4兆ドル(420兆円)の自社株の買いにより3,000兆円にもふくらみ、世界の株価総時価の50%になっています。420兆円の自社株買い(2011年~2018年)によって上がった分は、1,200兆円と試算されています(WSJ紙)。420兆円の社債発行が自社株買いになり、1,200兆円という3倍のレバレッジがかかった株価資産になっていたのです。

この株価が、18年9月と12月の利上げ(=社債の金利も上昇)によって20%下げ、600兆円の株主資産が失われたのが、18年10月から12月だったのです。寸でのところで、金融危機になるかという規模の株価の下げでした。

このとき、自社株買いバブルの株価は「下がる可能性が高いリスク資産」であり、金は「下がる可能性が小さい安全資産」と認識する投資家が増えたのです。下がる株を売って、現金を得て、それで金を買う投資家が増えてきました。この買いのため、金1オンスは、18年7月の1,175ドルから、18年12月25日には1,295ドルにまで、5か月で11%上げています。
※参考:金-価格-チャート.do

投資家から安全資産と認識されたのは、通貨では「債権国の円とスイスフラン」です。それと金でした。対外負債の大きな債務国の通貨であるドルは、「高すぎるリスク通貨」という認識が増えていったことを示します。
(注)2018年まで、ドルと米国株には、強気派が多かったのです。

2019年1月から8月

2019年になって、株価の下落(20%は暴落に近い)が続けば金融危機になると慌てたFRBは、2019年に予定していた3回の利上げの停止を発表します。出口政策は停止して、「再びの金融緩和(利下げ)」に向かうかもしれないという逡巡でした。

これは、金利の上げを織り込んでいたドルと株には、利下げに等しいことです。織り込みとは、将来の変化をすでに起こったかのように通貨や株価を売買する投資行動です。金融が緩んだ市場は、織り込み相場になります。ドルの利上げを織り込んでいた通貨と株価には、FRBの利上げの停止の発表は利下げと同じ効果をもたらします。

18年10月から12月には20%下げていたNYダウは、2万2,000ドルを底値にして、19年5月まで2万6,500ドルへと4,500ドル(20%)も回復したのです。

利上げの18年12月の113円から、利上げ停止の発表で、19年1月は107円に急落していた米ドル(ドル安/円高)も、4月までは112円にまで回復したのです(ドル買いが増えた)。

2018年7月から上がっていた金は、ドルの回復とともに、1オンス1,328ドル(19年2月)から18年5月までの5か月間で1301ドルへと27ドル(6%)下げています。「ドルと株価が上がるときは、金価格は下がる」という相関の傾向が生じています。

Next: 今年5月~6月にかけての為替や株価の動きの背景とは?

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