fbpx

金価格の現在はどんな状況といえるのか?長期的なトレンドでは4~6倍に上昇する=吉田繁治

FRBの利下げ後の異変(2019年8月)

FRBが市場の予想通り、短期金利を0.25%下げて2.00%~2.25%を誘導目標にしたあと、起こったのは、普通はない「長短金利の逆転」でした(米英で同時)。

普通の時期は、長期金利は高く、短期金利は低い。その差をイールド・スプレッドと言います。イールド・スプレッドが短期金利で調達し、長期金利(貸付金、長期国債、債券、株)で運用する銀行の利益になります。長期金利は、長期資金の需要と供給で決まります。

FRBが関与するのは、短期金利です。短期金利(短期国債)の利下げをすると、短期金利と長期国債の長期金利の利幅は大きくなり、これが銀行の長期運用を促して、企業や世帯に対する金融緩和になります。利下げが金融緩和になるのは、長短の金利差があるときです。

長期金利である10年債の市場で決まる金利は、2019年の1月には2.75%付近であり、3か月債の利回りは2.5%付近だったので、まだ長短金利差のイールド・スプレッドはプラスでした。

ところが、FRBが0.25%の利下げをしたあと、
・市場が決める長期金利のほうが、大きく下がって1.5%付近になり
FRBが関与できる3か月債の利回りの2%より、低くなってしまったのです。

長期金利の下げは、長期の資金需要の減退を示します。企業は、2019年のGDPの低下を予想して、長期資金の借り入れを減らしました。余った長期資金は、金利がつく長期国債の買いに向かったのです。このため米国の長期国債の価格が上がり、長期国債の利回りは1.5%に下がってしまいました。

イールド・スプレッドの逆転は、企業が将来のGDPの低下、あるいは相当に大きな減速を想定し、投資用の長期資金の調達を減らしたときに起こります。これは、しばしば投資の減少からの不況への引き金にもなります。金融市場は、「米中貿易戦争の激化+英国のEU離脱」からの世界GDPの減速を、IMFより大きく見ているのでしょう。企業には直接にわかる輸出入が、減っているからです。

(注)日本の上場製造業の純益も、19年4-6期は、早くも15%減っています。これは、株価では15%下落する要因になるものです。株価は、「次期期待純益×PER倍率」だからです。輸出が多いドイツは、世界貿易の減少のため、GDPの成長がマイナスになっています(19年4-6期)。

一方で、長期国債ともに長期マネーが避難した金は、買いが増えて1オンス1,547ドルに上がっています。FRBの利下げのあと、1か月での上昇が100ドル(7%)です。

2019年の9月には、FRBはさらに0.25%または0.5%の利下げをするでしょう。理由は、トランプ関税と英国のEU離脱(19年10月末)による米国の景気の低下と、株価の不安です。景気後退の原因は、金融的なことではなく、課税品目と関税率が強化された中国関税と、英国のEU離脱後の関税(10%)です。

ところがFRBは、筋違いの金融的な対策をとるのです。リーマン危機は金融が原因でした。このため、金融的な対策(量的緩和の4兆ドル)が効果を生んだのです。関税は金融ではない。世界的になったグローバル・サプライチェーンの分断です。金融的な利下げ策が効くはずもないものです。しかしFRBは、トランプからの人格攻撃も含む激しい利下げ要請に負けるでしょう。

長短のイールド・スプレッドが逆転した中での短期金利の下げは、金融緩和にはならず、逆に引き締めになります。米国企業もドイツや英国のようなGDPの低下予想から、投資用の長期資金調達を減らすからです。

2019年秋から冬の金価格は、すこしずつ上げていくでしょう。長期資金が、「安全資産」の金の買いに向かうからです。

ここまでが、現在までのことです。次回のメルマガでは、長期的な、といっても2022年ころまでの、金価格の予想の材料になる事項を検討します。

続きはご購読ください

【関連】後に引けない東京五輪。トイレ臭水泳会場、遊泳禁止も「条例変更」で強引開催へ=ら・ぽ~るマガジン

【関連】電通が目論む「情報銀行」構想の衝撃、個人情報保護よりも「活用」重視の恐ろしさ=岩田昭男

【関連】文在寅に突き刺さる2つのブーメラン、側近スキャンダルと反日煽り過ぎで支持率急降下=勝又壽良

image by: corlaffra / Shutterstock.com

1 2 3 4 5 6 7 8 9

ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』(2019年9月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで

[月額660円(税込) 毎週水曜日]
●最新かつ普遍的なビジネスの成功原理と経済・金融を、基礎から分かりやすく説いて提供 ●時間がない、原理と方法の本質を知りたい、最新の知識・原理・技術・戦略を得たいという方に ●経営戦略・経済・金融・IT・SCM・小売・流通・物流を、基礎から専門的なレベルまで幅広くカバー ■新規申込では、最初の1ヶ月間が無料です。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー