2019年5月から6月
2019年5月からは、まずドルが下げに入ります。1ドル111円から、8月は106円台です(5%のドル安/円高)。原因は、トランプによる中国関税の強化です。
NYダウも、5月からのドル安(5%:ドルの売りの超過)と同時に、2万6,500ドルから2万5,000ドルへと6%下げています(2019年6月)。
・米国株は、米国が債務国であり海外からの買いが多いので、「ドル上昇=株価上昇」になることが多い。
・「円安=株価上昇」になる日本とは逆です。日本は債権国であり、円安が海外生産の利益増加とドル建ての対外資産(1,080兆円)の上昇になるので、円安=株価上昇になります。
当時は、「19年秋には米中貿易戦争は緩和に向かう」というのが、投資家の過半の見方であり、5月までの回復したドルと株価は、それを織り込んでいたのです。
ところが逆に、トランプが行ったのは予想とは違う「関税の強化」への方向でした。2019年5月からは貿易戦争が激化し、2019年度は米中のGDPが、IMFの1%減の予想以上に減速するという見方に変わって「株価下落」になっていったのです(2019年5月~6月)。
GDPがそれまでの期待値より低下することは、企業の売上が期待されていた水準より減ることであり、売上が減れば、企業利益(純益)は下がります。株価の根拠になっているのは、将来の1株当たり企業純益の割引現在価値(NPV)だからです。企業純益がそれまでの期待より下がるという見方に変わると、株は売られて下がります。
2019年7月から8月
19年7月の末のFRBによるFOMCでは、短期金利の0.25%の利下げが確定していました。6月の米国株が下げていたからです。市場は7月末の利下げを織り込んで、6月の安値(NYダウ2万5,000ドル)から、2万7,500ドルにまで、1か月で10%も上げていました。ドル相場も、6月までの下げから、7月には108円付近で波動していました。
一方で金価格は、利下げ期待から1オンス1,284ドル(5月14日)から、急騰し1,500ドル台に近づいていたのです(7月末)。金利が下がると、長短の資金が流れてきて金を買い、金価格は上げるという原則通りの動きでした。このときは米国株上昇の中で、金価格も上がっていたのです。盛んに言われたのは、「金は安全資産」ということでした。
理由は、2018年10月以来、価格変動が大きくなったドルと米国株が「リスク資産」と見なされるように変わってきたからです。2018年のトランプ関税以降、相当数の投資家に「認識の変更」が起こっていたのです。