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小泉進次郎氏、ポエムよりも言うべきことがあったはず。原発処理水問題での大失態=原彰宏

知識不足の大臣が多すぎる

原田前大臣への批判は、発言内容は後で検証しますが、発言が内閣改造の前日だったことについて、就任の際に発言して議論するのではなく、大臣交代の前に言うのはあまりにも無責任だという漁業関係者の思いは大事にすべきだと思います。

少し論点がずれますが、原田前大臣は、この指摘に対して、就任してから1年かけて考えて出た結論だったと述べてますが、よく大臣就任記者会見で「これから勉強します」と答えますが、そんな人を所管大臣に据えてよいのかと思いますね。

適材適所なら、たとえばずっと環境問題を意識的に携わってきた人を据えるべきで、農業なら実際に農業現場に精通している人を大臣にすべきで、今もそうですが、パソコンにさわったことがない人をIT大臣にしたり、今のIT担当大臣だってとてもITに精通しているとは思えず、もっと若手でITに精通している人はいるはずです。

国民をなめていますね。

だから官僚の言いなりになり、どうせお飾りだから数年我慢すれば居なくなるとか、うまく操れば良いと政治家が官僚に軽視される風潮になるのです。

汚染水の海洋放出発言を聞いた人への配慮が足らないことは事実で、そこは明確に原田前大臣の失敗だと思います。

ただでさえ風評被害で苦労している福島の人たちの感情を、逆なでしたことになりますからね。

発言が「捨石」覚悟の重要な話だったとしても、もっと丁寧に、十分な前置きを入れて「海洋放出」という単語につなげるべきだということは否めません。

これがエリートの限界と言えばそれまでですけどね。

ここでは「配慮の欠如」の問題はここまでにして、発言内容の重要性に触れたいと思います。

トリチウムは有害か

福島原発処理の現実はどうなっているのか?

まず押さえておかなければならないキーワードは、

・トリチウム
・汚染水と処理水
・毎日170トン前後増え続けている現実

です。

トリチウムは「三重水素」と呼ばれるもので、不安定なため天然には微量しか存在しないものですが、トリチウムがこんなに騒がれるのは、最後まで除去できないところにあります。

福島第一原発では、毎日5,000人の作業員が防護服を着て、敷地の中の水を汲み上げて、約1,000基のタンクに貯めることを行っています。

その水のほとんどは、単なる雨水と地下水なのです。

一般に原発から出る水は、強い放射性物質を除去した残りは薄めて流しますが、2011年の事故で原子炉の炉心が溶融し、それを冷却した水に大量の放射性物質が混入しました。

これを除去するために、国の予算で多核種除去設備(ALPS)という最新鋭の設備を導入し、62種類の放射性物質を除去しています。

つまり、この時点で「汚染水」ではなく、ALPSで放射性物質が除去された「処理水」となるのです。

しかし、トリチウム(三重水素)だけはALPSでは除去できないで、処理水の中に残ってしまうのです。トリチウムは自然界にもある水素の放射性同位体で、酸素と結合して水に混じっているので、化学的には水素と同じで、原理的に分離できないのです。

トリチウムの含まれる水の量は福島第一原発全体で57ccと見積もられていますが、これが100万トンの水の中に混じっているのです。

ただトリチウムがごく微量のベータ線を出すのですが、水中を0.006mmしか伝わらないので人体にほとんど影響はありません。たとえば体重60kg程度の人の場合、50ベクレル程度のトリチウムを体内に保有していると言われています。

このことは、少しでも化学物質を勉強すれば分ることなのですが、「トリチウム」という名前が仰々しいのか、一般の人には理解してもらえないのが問題なのです。

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