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小泉進次郎氏、ポエムよりも言うべきことがあったはず。原発処理水問題での大失態=原彰宏

「トリチウムは無害」は伝わらない

いくら専門家がデータを駆使して説明しても、日本の隅々までにトリチウムは無害であることをいきわたらせることは不可能です。

福島県漁業協同組合連合会が、汚染水(処理水と表現するほうが妥当かもしれませんが)海洋放出を反対するのは、「トリチウムが危険だ」と主張したいのではなく、「消費者が危険だと思うので魚が売れない」ということなのです。

トリチウムの害が“いかに小さいか”を説明しても、漁協の「風評被害は消えない」という論理には勝てないのです。

となると、お金で解決するしかない…。

漁業関係者にも生活があります。そもそも風評被害の原因を作ったのは東電ですから、風評被害による経済的損失を要求する、つまりは賠償責任を求め続けるわけですが、東電側はすでに休業補償を出していて、2回も補償金を出すことはできない、事故の責任は東電にあるので国が賠償することもできないという立場を取っているのです。

そんな中で、今回、当時の東電経営陣の事故責任は無罪判決が出されました。とても重要な判決です。

毎日170トン前後増え続けている現実

現在、毎日170トンの汚染水が発生します。

それを処理タンクに貯蔵しているのですが、すでに977機のタンクが満杯状態で、このままでは、今の敷地面積では2022年夏ごろには敷地内保管の限界が来るのです。

処理水をこれ以上貯めるのは危険で、このままタンクが増え続けることで、福島第一原発の敷地を埋め尽くす2022年以降に大地震が起こったら、あふれてしまいます。

2015年には作業員がタンクから転落して死亡しました。

このとき原子力規制委員会の田中俊一前委員長は「世論に迎合して人の命をなくしては元も子もない」と批判し、トリチウムの海洋放出には技術的に問題がないと述べていました。

科学的には、トリチウムが含まれる処理水に問題はないとされてますが、地元漁民の反対や世論の動向を気にして、処理水の対応を協議する経産省小委員会でも結論を先送りして今日に至っています。

もうあと3年で貯蔵タンクが限界になることで、原田前環境大臣は「捨石になる」として、すぐにでの海洋放出をすべきだという持論を打ち上げたのです。

あの発言のタイミングや配慮のなさは指摘どおりですが、発言の趣旨としては、ここまで結論を先送りしている経産省小委員会に結論を急ぐ意味合いもあり、また世間に、処理水の深刻さを理解してもらうため、海洋放出の結論ありきではないですが、処理水の議論を前に進めて欲しいという思いが込められた発言だったようでもあります。

さらに福島圏内の汚染土は約1400万立方メートル、これは東京ドーム11個分に相当し、中間貯蔵蔵開始後30年以内(2045年)に県外の最終処分場へ持ち出すことになっています。

政府は、30年以内に県外の最終処分場へ運び出すとしているが、その候補地すら決まっていません。

Next: あと3年で溢れる原発処理水。小泉進次郎新環境大臣は意味不明な発言?

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