STO関連ビジネスを模索する動きが急速に活発化
こうした状況下で新たな動きとして注目されているのが、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)である。
STOはブロックチェーンを活用し、株式や不動産などの実物資産をデジタル証券化する形でセキュリティ・トークンを発行し、投資家に販売することで資金調達を行う。
流行が終焉したICOに似ているが、ICOの場合は実物資産の裏付けを持たないユーティリティ・トークンを発行するため、資金調達に向けたスキーム上の自由度は高いが、ユーティリティ・トークンの理論値の計算が難しく、結果的に詐欺的なICOも多発した。そして投資家が不信感を強め、金融当局による規制が強化された。
これに対してSTOの場合は、株式や不動産など実物資産の裏付けを持たせ、法令上の有価証券(金融商品)の機能が付与されたデジタル証券をセキュリティ・トークンとして発行する。この点がICOと大きく異なる。
不動産などを小口証券化して販売する手法を、ブロックチェーン技術を活用してデジタル証券に置き換えた形である。実物資産の価格をベースとしてセキュリティ・トークンの理論価格を計算しやすく、法令上の有価証券として発行するためICOに比べて投資家に安心感を与えやすいため、機関投資家を中心に幅広い投資マネーを呼び込めると期待されている。
海外ではSecuritize社など多くの企業が、STO関連ビジネスの法的対応や標準化に向けた動きを活発化させている。
日本では19年5月に資金決済法と金融商品取引法が改正され、法令上の呼称が仮想通貨から暗号資産に変更された。交換業者やICOに対する規制が強化されたが、一方では金融商品取引法上の定義見直しによって、暗号資産が電子記録移転権利として金融商品(第1項有価証券)に追加された。
このため同法が施行される20年春以降には、セキュリティ・トークンを利用した資金調達の本格化が期待されている。そしてメガバンクや証券などの金融業界を中心に、セキュリティ・トークンを用いた不動産の小口証券化や社債の小口販売、株式型セキュリティ・トークンによる資金調達など、STO関連ビジネスを模索する動きが急速に活発化している。
19年10月にはSBI証券(SBIホールディングス)<8473>など証券6社が、STOの自主規制策定などを行う日本STO協会を設立した。19年11月には三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)<8306>が、セキュリティ・トークン取引システム構築に向けて21社が参加するコンソーシアムを発足させた。
企業や不動産への投資事業を展開するマーチャント・バンカーズ<3121>は、STO支援などブロックチェーン関連の新ビジネスを本格化させるための準備を進めている。