相場はトランプの手のひらの上
2019年の相場は、年間を通じてトランプ大統領の発言に右往左往させられることになりました。
その1つがFRBへの利下げ圧力です。クリスマス・ショックを受けて、景気後退を避けるためにと、TwitterでFRBに利下げを迫る圧力をかけ続けました。これを受け、利下げに対する市場の期待感が高まり、年前半の上昇が起こります。
しかし、元はと言えば昨年までトランプ大統領自らが仕掛けた米中貿易戦争により中国経済が減速し、株価が急落したのです。大統領としては自らの手腕で株価を上げたように発言していますが、見れば見るほど自作自演、マッチポンプなのです。
市場が利下げを織り込むと、夏頃には再び勢いがなくなってきます。そこで大統領は米中貿易戦争の和解をちらつかせ、投資家の心をくすぐったのです。すると、秋頃から年末にかけて、株価は見事に上昇しました。
米国株は史上最高値を更新し続け、大統領はご満悦です。Twitterを使った「株価操作」に関して彼の右に出る人はいないように思えます。
なぜトランプ大統領がここまで株価にこだわるのかと言えば、2020年11月3日には2期目をかけた大統領選挙が行われるからです。米国では大多数の国民が何かしらの形で株式を持っていますから、株価の上げ下げは支持率に直結します。
これから大統領選挙にかけてトランプ大統領の思い通りになるとすれば、株価はもう下がりようがないという気さえします。私のメインシナリオもここからのさらなる上昇を見込んでいます。
しかし、もう少し先のことまで考えると、トランプが再選するかしないかにかかわらず、大統領選挙後はいよいよ「弾切れ」になるのではと考えています。米大統領に3期目はありませんから、再選されれば株価への関心も失われてくるでしょう。
そうなると、2020年後半、大統領選挙後はいよいよ株価の動向が怪しくなると私は考えています。
逆イールドは景気後退のサイン?今回は違う?
もう1つ気になるのが、今年8月に発生した「逆イールド」です。逆イールドとは、長短金利が逆転することで、投資家心理が慎重になっている時に起こるとされます。
歴史を振り返ると、逆イールドが発生してから約1年半で景気後退が起きると言われています。それを当てはめると、やはり2020年の後半が怪しくなってくるのです。
一方では、逆イールド発生後の景気後退に関し、様々な理由を挙げて否定する記事も目立っています。足元で株価が上昇していることから、ますますその論調が強くなっているように思えます。
これこそが危険な徴候です。確かに、過去の逆イールド発生時とは金利の絶対水準も異なり、まったく同じ状況とは言えないでしょう。それでも、過去数度にわたって結果として景気後退に陥っている事実は無視すべきではありません。
そもそも、景気は好不調を繰り返すものです。リーマン・ショック後の景気回復はすでに11年と過去に例を見ないほどの長さになっています。単純に長さによって区切られるべきではありませんが、いつか景気後退が起きることを忘れてはいけません。
株式投資で最も危険な言葉は「今回だけは違う」です。特に景気サイクルの終盤では歴史を無視した挙げ句、無残にも敗れ去った投資家は少なくありません。私たちが肝に銘じるべきは「歴史は繰り返す」という言葉でしょう。
足元で株価は大きく上昇しています。これを「グレートローテーションのはじまり」と言う人がいますが、私はそうは思いません。ろうそくは消える前が一番良く燃えるのです。