リスク2:米中対立
米中貿易戦争の第1段階は概ね合意されたとされる。これにより関税引き上げは延期された。中国は関税引き下げも表明した。
とはいえ、米中対立の本質が世界の覇権争いである以上、簡単な最終合意は望めない。
例えば、米国は核軍縮条約をめぐり中国の参加に固執している。米ロが新戦略兵器削減条約を結べば、中国の核戦力増強を抑えられないとの懸念からだ。
事実、2018年8月から2019年6月にかけて、米露がそれぞれ265個、350個の核弾頭を減らした中で、中国は10個ながら増加させた。
米中は共に軍拡を急いでいる。共に、南シナ海、東シナ海の制海権を握ろうとしている。中国は台湾を武力を用いてでも併合したいと発言している。
こうした対立が将来どのような結果に繋がるかは現状では不明だが、2020年に米中対立が解消するとは考えない方が無難だ。
リスク3:トランプ大統領の弾劾
米下院は2019年12月19日にトランプ大統領を弾劾訴追した。
訴追理由は「権力の乱用」と「議会妨害」とされているが、ブルームバーグなどは20近い「罪状」を挙げている。どれもが、過去にメディアで大きく取り上げられてきたものばかりだ。
トランプ大統領は「米国第一主義」を掲げるが、世界の覇権国家であるこれまでの米国の大統領が自国より国際機関や他国を優先してきた事実はない。
誰もが「米国第一主義」だったのだが、覇権国家としてより巧妙であったのだ。
「大欲は無欲に似たり」という言葉がある。米国で言えば、世界覇権のような大欲は、一見無欲に似ているというものだ。トランプ大統領以前の大統領達は、世界貢献という体裁を取りながら、自国の利益を優先してきた。これは長期的な視野で、いかに短期的な欲望を抑えられるかにかかっている。例えば目先の欲に目がくらむと、人との信頼関係が築けないようなものだ。
私は常々「米国の覇権を弱めているのはトランプ大統領だ」と述べている。象徴的なのが、エルサレムとウェストバンクでのイスラエルへの肩入れで、これで心情的にはすべてのアラブ諸国を敵に回した。
トランプ大統領の一連の政策で一番得をしたのはロシアで、中国とは軍事同盟を結び、NATOからは事実上トルコを得た。アラブで最も親米的なサウジアラビアでさえ、ロシアとの大型契約を結んだ。
トランプ大統領でない方が、米国の覇権維持には有効だ。
とはいえ、世界一の大国の大統領が弾劾裁判にかけられるというのは、2020年の大統領選と相まって、世界経済、金融市場の大きなリスクだと言える。