fbpx

新規上場したダブルエーは、泥跳ねを気にしない婦人靴の開発でさらなる業績拡大なるか

思考実験──片づけるべき用事とは

『ジョブ理論』によれば、以下の問いに答えることで用事をより具体化できるようになる、としています。

1.その人がなし遂げようとしている進歩は何か。求めている進歩の機能的、社会的、感情的側面はどのようなものか。

2.苦心している状況は何か。誰がいつどこで何をしているときか。

3.進歩をなし遂げるのを阻む障害物は何か。

4.不完全な解決策で我慢し、埋め合わせの行動をとっていないか。ジョブを完全には片づけてくれない商品やサービスに頼っていないか。複数の商品を継ぎはぎして一時しのぎの解決策をつくっていないか。

5.その人にとって、よりよい解決策をもたらす品質の定義は何か、また、その解決策のために引き換えにしてもいいと思うものは何か。

出典:『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(第2章 プロダクトではなく、プログレス)

用事の特定

イノベーションを起こすための最初のステップは、ある状況下で顧客がなし遂げようとしている進歩を特定することです。そして、その進歩には機能的、感情的、社会的側面があり、どれが重視されるかは文脈によって異なってきます。また、用事を特定することにより、真の競合相手もみえてきます。では、同社の場合はどうなるのでしょうか。

今回は、同社グループが課題とする「商品企画開発力の向上」を取り上げます。同社グループはそれを、次のように認識しています。

当社グループの企業理念の実現にあたり、世の中に幅広く認められる商品・サービスを適正価格及び適正品質で提供してまいります。そのため、店頭における消費者動向や競合他社の把握・分析のほか、市場全体のニーズ・トレンドを迅速に捉え、消費者とのコミュニケーションを密に重ねることで、より顧客満足度の高い商品・サービスの企画開発力の向上に取り組んでまいります。

同社グループのブランドの特徴は次の通り。

定番ものからトレンド感を取り入れたデザイン性のあるものまで幅広いアイテムを取り揃えている(後略)。

自分のライフスタイルをもった女性に向けて、デイリー使いできるベーシックなデザインが中心。

思わず、「軽い!」と言ってしまうような軽さと履き心地で、機能性に特化したブランド。

トレンドをさりげなく取り入れ、都会的なデザインを提案する大人の女性に向けたシューズブランド。

こうしてみると、デザインや美観を重視するブランドが3つ、機能性に特化したブランドが1つということが分かります。ここで着目したいのは、軽さと履き心地以外の機能性、具体的には歩いた後の「泥はね」です。

雨の日に婦人靴を雇うとする顧客がなし遂げようとする進歩の機能的側面は「駅まで急ぐ」ということ。感情的側面として「デザインや美観」以上に「泥はね」を気にするでしょう。また、「防水性」という面も見逃せません。

Next: ダブルエーがすべきは、婦人靴の新たな機能を開発すること

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー