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米株、日本株は妥当値なのか?日経225の予想PER15倍に込められた投資家の期待とは=吉田繁治

2020年の米国株、株買いの原資からの予想

(1)2020年のマネーの動きで、確定していること

まず、拡大した財政赤字(減税+医療費・年金の増加傾向)からの、米国債の新規発行が、1.5兆ドル(165兆円:1か月の平均で13.75兆円)と大きくなります。

i)日本の金融機関の米国債の買い増しは、10兆円程度でしょう。

ii)18年8月のトランプ関税から貿易黒字が減っている中国の米国債の買い増しは、少なくなります。逆に、米国債の売りがある可能性が高いでしょう。

iii)2018年の、80ドルからの石油価格の下落(60ドル付近:19年10月)から、財政が赤字になっているサウジ(-321億リアル:約9兆円)は、米国債の売り手にはなっても、買い手ではない。

iv)ブレグジットと中国貿易の減少が重なって、先進国でもっと不況になっている欧州も、米国債を買い増す余力はない。

欧州の全部の銀行が、日本の-0.2%より一段深いマイナス金利(-0.6%~-0.4%)がもたした利益危機に対し、合計で6万人以上の人員カットの最中です。日本の国債のゼロ~マイナス金利を主因として、本業が赤字の地銀(105行のうち42行:構成比40%)に似ています。

ゼロ金利が銀行の赤字をもたらすときは、日銀はゼロ金利を停止しなければならない。しかし利上げをすると、1,000兆円の国債金利が上がって、国債価格が下がるので、金利序章には踏み切っていません。

以上の事情から、増える米国債1.5兆ドル(月平均1,250億ドル:13兆7,500億円/月)のうち、およそ1.2兆ドル(月平均1,000億ドル:11兆円)は、一旦は、米銀が財務省に入札して買わねばならない。(注)海外銀行も入札します。

米銀による、1か月に約11兆円の国債買いが続くことは、「米銀システムでの、2019年より大きなドル不足」を意味しています。国債を買うために、株を買い増すどころか、逆に、換金売りが増えるでしょう。

米国は、ドルの海外流出を示す経常収支が、構造的な赤字(2019年は5,394億ドルに増加:59兆円)です。このため、米銀には、新しく発行される米国債を、全量は買い受ける資金がなく、発行が増えた国債を買えば、銀行が現金不足になるからです。(注)日本は、経常収支(貿易収支+海外投資の所得収支)が黒字であり(2019年は1721億ドル:19兆円)、新規国債の全量の国内での引き受けができます。

(注)米国の赤字国債が、米政府の財政支出(医療費・年金・公共事業)になると、企業と世帯の預金を通じ銀行預金になっていずれ戻ってきます。しかしそれには、半年以上の時間差があり、その間、銀行の国債の買いが増えた分、ドル現金が不足するでしょう。

Next: 2019年の米国企業の自社株買いは前年から20%減少した

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