米中貿易戦争やコロナウイルスなどのリスクが多い状況下、安定した収益を期待できる“利回り投資”の存在感が高まっています。その方法について検証しました。(『投資の視点』日暮昭)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。
利回り投資の効率アップするポートフォリオ運用の成果を検証
日経平均と花王でポートフォリオを組んだ場合のリスクリターン
株式相場は米中間の貿易摩擦で第1段階の合意が成されたことで当面、両国の本格的な衝突懸念は薄れたものの今後の先行きは不透明であり、またイラン問題、英国のEU離脱条件の決着の行方、さらに中国発の新型コロナウイルスによる肺炎の拡散懸念など投資環境の不安定要素は依然盛りだくさんです。
こうした状況下で安定した収益を期待できる“利回り投資”の存在感が高まる中、昨年9月のフル版の講座で日経平均ETF(上場投信)が個別銘柄投資に比べ絶対に倒産しない等の点で優位性があるとしました。
そのうえで、投資収益の上積みとリスクの低下を同時に手に入れる手段として日経平均ETFと、収益と配当利回りの確かさで優良銘柄として定評のある花王<4452>とでポートフォリオを組むことを提示しました。
ポートフォリオのリスクとリターンは構成銘柄の投資配分で変わります。下図は花王に全ての資金を投入する場合から10%ずつ日経平均への投資を増やしていき最後は日経平均へ全ての資金を投入する場合に得られる11通りのポートフォリオのリスクとリターンの位置を示します。横軸がリスク、縦軸がリターンです。リスクとリターンの推計期間は当時の直近時点の2019年9月から2014年10月までの5年間です。
昨年9月の講座で、上述の投資のねらいに合うポートフォリオのうち、最も望ましいポートフォリオとして日経平均よりリターンが高くリスクが最も低い「リスク最少ポートフォリオ」を選定しました。このポートフォリオは日経平均を7、花王を3の割り合いで組まれます。
今回の講座では、このポートフォリオを昨年9月末に設定し直近の2020年1月27日まで実際に運用した場合にどのような投資パーフォーマンスを挙げたかを実データに基づいて検証します。
結果は、この間に花王の株価は14%の上昇、日経平均は7%の上昇でポートフォリオはその構成比にしたがって9.3%の上昇でした。この約4か月の運用期間において収益に関しては当初のねらいを満たしています。
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