本当に日本はカジノを誘致して、既存アジア施設と競争できるのでしょうか。もし外国人観光客が呼び込めないのなら、想定している経済効果は見込めないのではないでしょうか。今回は経済面から、IR統合型リゾートの効果を考えます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年2月17日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本のカジノは儲かるのか?
そもそもカジノは儲かるのでしょうか?
カジノ誘致で問題になっているのは、
・ギャンブル依存症
・社会風紀の乱れ
が言われています。
これらの問題を抱えながらも、カジノ誘致を必要とするのは、ひとえにその経済効果にあると思われます。
そもそも、カジノを誘致することで、本当に経済効果はあるのでしょうか。
すでに日本近郊には、マカオ・シンガポール・韓国にカジノがあります。日本のカジノは、これらの既存カジノと差別化することはできるのでしょうか。
日本式カジノ運営の概略が明らかになってきましたが、ほんとうにこれで経済効果を期待することができるのでしょうか。
今回は経済面から、IR統合型リゾートの効果を考えてみましょう。
カジノ構想は「経済の落ち込みの穴埋め」
カジノ誘致反対派が前面に出してきてるのが「ギャンブル依存症」問題ということで、政府は国民感情を意識して、法案には「カジノ」という言葉を避けて「IR統合型リゾート」としていると、マスコミなどではよく言われています。
しかし、どんなにオブラートで包もうが、この法案の中心にあるのは「カジノ」であることは間違いないのです。
「IR統合型リゾート」としたことで、大儀としての目的が必要となり、それを
・観光・地域経済の振興
・財政の改善
と、しっかりと謳っています。
直接的表現をすれば、カジノによる収益で財政の改善に繋がるということのようです。
企画当初は、カジノを地方都市に誘致することで地方の活性化にも繋がるとしていたのですが、結局は大都市がカジノ誘致候補地として残っています。
もともと東京のお台場にカジノ施設を造ることから始まったカジノ構想ですが、その後大阪市が積極的に動き、結局は、日本国内に複数のカジノを誘致することになってしまったと思われます。
日本国内に複数のカジノが存在することは、他国との競争で不利にはならないのでしょうか。
地方活性化から考えれば、米軍基地負担問題を抱える沖縄にカジノを誘致することが検討されますが、玉城知事はカジノ誘致には消極的です。
もともとカジノ誘致構想は、石原都政で打ち出されたもので、その目的は、東京五輪後の経済の落ち込みの穴埋めを目論んでいましたからね。石原慎太郎元都知事は、東京五輪とカジノをセットに考えていたようです。
同じような発想が、松井一郎大阪府知事にもあり、2025年の万博後の経済の落ち込みの穴埋めとして、カジノを利用しようと考えているようです。
「財政の改善」の観点からだと、カジノを誘致したいという地方自治体も多いでしょう。
ただカジノ運営は民間企業に委託することになるのですが、その民間企業が地方とのタイアップを避けたことで、いつの間にかカジノ誘致から地方都市が撤退していった経緯を見ると、どうも当初の本質からずれてきているようにも思えます。
残った候補地は、東京・大坂・横浜・名古屋という大都市圏で、地方都市はハウステンボスを利用することで誘致を進めたい長崎県、他に和歌山県があります。