「決定的な分岐点」を迎えた日本の株式市場
ファンダメンタルズという観点から、日本の株式市場の状況は米国以上に脆弱であると考えなければならないが、さらに忘れてならないことは市場の構造変化という面でも「決定的な分岐点」にあることだ。
それは、これまで年金世代への年金支払いは、現役世代が支払う年金保険料と税金で賄われてきた。しかし、高齢化の進展によって近い将来、早ければ今年度から安倍総理が「世界最大の機関投資家」と自負してきたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産取り崩しが始まり、年金支給の財源として使用される可能性が高いことである。
それは、これまで日本の株式市場の最大の買手であったGPIFが、売手に転じるということである。そしてこのことは不確実性の「相場観」ではなく、公的年金の健康診断ともいわれる「財政検証」によって明らかにされている現実である。
問題はいつから始まるかという時期の問題だけである。
年金支給の財源が枯渇する?
このGPIFの資産取り崩し開始の恐ろしいところは、高齢化社会という状況に変化がない限り終わることがないということだ。GPIFの持つ約169兆円の資産が、仮に年金支給の財源として年に4兆円使われるとしたら、GPIFの資産の25%を占める「国内株式」は1年間で1兆円売られるということである。
そしてそれは1年、2年で終わる話ではなくGPIFの資産が枯渇するか、高齢化社会に終止符が打たれるまで続くのである。
GPIFの資産取り崩しが及ぼす市場への影響や、資産形成に励もうとする現役世代の人達に及ぼす影響については、2月27日にKKベストセラーズから出版された拙著『202X金融資産消滅』で詳しく解説しているのでそちらを参考にして頂きたい。
新型コロナウイルスの感染拡大に関して、WHO(世界保健機構)は「決定的な分岐点」を迎えているとして、各国にさらなる警戒を呼び掛けている。
日本の投資家が忘れてはならないことは、新型コロナウイルスの感染拡大だけでなく、日本の株式市場も「決定的な分岐点」にあるということだ。
先週の日本株の大幅下落は、「新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済悪化懸念」や「世界同時株安」という外的要因によるものではなく、国内に充満していたリスクが新型コロナウイルスの感染拡大という外的要因によって顕在化してきたものだと捉えるべきである。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年3月3日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による