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なぜ遺産相続「子ども全員に均等分割」は難しい?遺産“争族”にしないためにできること=牧野寿和

実家の「資産価値」を均等に分けるだけ

「戸建て住宅」を遺産分割する例を挙げます。

子どもたちはすでに独立していて、両親が亡くなった後、実家に誰も住んでいなければ、その家を売却して得たお金を均等に子どもの数で割ればよいのです。

ただし、両親と子どものうちの誰かが同居していた場合は厄介な問題になることもあります。

A家では、長男のBさん家族がBさんの両親と同居していました。

両親が亡くなった後、長男のBさん家族も実家を離れて別のところに住むのであれば、実家の売却は可能でしょう。

しかし、長男のBさん家族がこのまま実家に住み続ける場合、実家の相続資産価値を税理士に算定してしてもらい、長男のBさんがほかの兄弟よりもらいすぎている分を、通常は、ほかの兄弟には現金で渡します。

例えば、実家の相続資産価値が900万円で、2人兄弟であれば兄弟ともに450万円ずつ遺産を相続することになり、長男のBさんが、実家(不動産)を相続したので現金で450万円、長男のBさんがもう1人の兄弟に払います。

3人兄弟であれば、長男のBさんがほかの兄弟に300万円ずつ、計600万円支払うことになります。

ただ、例外だらけで現実的ではない?

ただ、この解決策は机上だけで通用することが多く、現実的ではないことの方が多いです。

なぜなら、家庭ごとに事情は違うからです。

上記の場合でも、父親の遺産は実家の戸建て不動産だけも、母親はかねてより貯蓄をしていて、その貯めたお金の一部を生前に長男のBさんでない方の子どもに生前贈与しているかもしれません。

また、こんな例もありました。

親と同居しているCさんは、両親が生前介護の状態になり、公的な介護認定も受けました。

両親の介護のケアにかかった費用は、両親の貯えや介護保険から負担できました。しかし、一部はCさんの家計から負担した分もありました。Cさんは、両親の介護の世話は子どもたち全員が費用を負担し合うものであり、ほかの兄弟からも費用の負担を希望していました。

ただ、両親が介護の状態になった時に、自宅の玄関や階段に手すりの設置や洗面所、風呂の改修などもしました。この改修費用についてもCさんは、ほかの兄弟にも均等に負担してもらいたく思っていました。

しかし、ほかの兄弟からは、手すり、洗面所や風呂は、将来的にCさん家族も使えるものだからと費用負担に難色を示しました。

Cさんは、実家は築古の建物だから両親亡き後の近い将来に建て替えを予定していると言っています。

相続税法は、社会の実態に合うように改正はされてはいるようですが、繰り返しになりますが相続税が必要ない相続でも家庭に即した相続対応策を練っておくことは、いつの時代でも大切です。

Next: 事業承継が関係している相続は、事業主の家族だけの問題に留まらず従業員――

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