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大阪の“事実上医療崩壊”を招いた失敗の本質。日本政治は何を間違えたか?=吉田繁治

日本の人口に対する感染率は、第4波の現在でも米国の25分の1です。しかし、大阪は事実上の医療崩壊に直面するなど、事態は深刻です。なぜ日本は危機的状況に陥りやすいのか。その要因を経済的観点から分析します。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

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※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2021年4月21日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

大阪府(人口882万人)は事実上の医療崩壊

大阪府では1日1,000人を超える新規陽性者が出ていて、254床しかない重症病棟が埋まり、あふれた54人の重症者は、軽症・中等症患者向けの病院で治療されていると言います(4月19日時点)。

阪神淡路大震災(1995年)のとき、押しよせるケガ人に対して、医師がトリアージ(命の順序の選択)を迫られたことと同じ状況です。

コロナでの重症は、ICU(集中治療室)に収容するか、人工呼吸器をつける必要があると医師が判断した患者です。

重症者の必要な収容ができない状態が「医療崩壊」です。

大阪府では1,700床ある、感染症の軽症・中等症患者向けの病院でも85%の使用率に高まっています。病床では、スタッフ確保の問題もあり、ホテル以上に交代の日数がかるので、ベッドの使用率が65%くらいを超えると、適時の収容が困難になっていきます。

近隣の他県に、応援を頼むことしかない。

以下は、4月14日とやや古いデータですが、その使用率です(軽症・中等症患者向け)。現時点ではもっと切迫しています。
※参考:病床使用率 全都道府県グラフ|NHK特設サイト

宮城県  61%
大阪府  67%(→85%:4月19日)
兵庫県  74%
奈良県  68%
和歌山県 64%
徳島県  66%
沖縄県  85%
石川県  46%(中間点)
長野県  41%(中間点)
三重県  42%(中間点)
京都府  46%(中間点)

一方で、ほぼ30%以下と余裕があるのは以下の地域です。国民の全員がかかることなので、全都道府県を挙げます。

その後も各地の新規感染は増加していますので、現在はさらに使用率は高まっているでしょう(事例は上記の大阪)。

北海道(26%)、青森(24%)、岩手(14%)、秋田(9%)、山形(37%)、茨木(21%)、栃木(24%)、群馬(19%)、埼玉(37%)、千葉(24%)、東京(29%)、神奈川(22%)、新潟(34%)、富山(11%)、福井(28%)、山梨(11%)、岐阜(16%)、静岡(16%)、愛知(25%)、滋賀(37%)、鳥取県(23%)、島根(3%9)、岡山(22%)、広島(10%)、山口(9%)、香川(33%)、愛媛(32%)、高知(3%)、福岡(25%)、佐賀(9%)、長崎(5%)、熊本(7%)、大分(7%)、鹿児島(10%)

われわれの日常は、様々な不慮の事故による怪我と、病気に囲まれています。その中で、不安にならず暮らしているのは、治療薬があり、病院があるからです。

しかし新型コロナでは、ワクチンはできていても治療薬はなく、新規感染が増加すれば、現在の大阪府のように病床からあふれる人が出て、重症者用病棟ではトリアージを迫られます。

日本の人口に対する感染率は、米国の25分の1。なぜここまで恐れられる?

米国の感染数は累計で3,200万人(人口の約10%)、10人に1人が感染しています。日本では、54万2,300人(人口の0.4%:250人に1人)です。

人口に対する感染率は、米国の25分の1と極めて低い。それにもかかわらず、恐れられる度合いが高いのは、3要素からでしょう。

1. ワクチンの接種が、米国の約6~7か月遅れ(注:米国の接種率は人口100人当たり63.1%)
2. 新規感染が少し増えると、現在の大阪府のように病院からあふれる人が出る
3. 感染すれば、重症化リスクが約20%と高い(65歳以上の高齢者の割合が世界一の高さであることも影響)

Next: 日本のワクチン遅れは顕著。医療崩壊が起きやすい背景とは

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