fbpx

米金利上昇で予想される住宅ローン破綻者の続出。パウエル発言から始まる世界恐慌への道=吉田繁治

中央銀行は、約100年、金融政策をいつも誤ってきた

では、なぜ…FRBの議長パウエルは、ジャクソン・ホール会議で、

1)22年9月の利上げを0.75%にすること、
2)11月、12月、および2023年の「利上げとQT(量的縮小)の継続」を示唆する発言をしたのか?
(注)金融政策を決めるFOMCは、1月、3月、5月、6月、7月、9月、11月、12月であり、年8回です。

世界の中央銀行総裁、財務省、エコノミストが集まるジャクソン・ホール会議は、イリノイ州のリゾートホテルで、毎年8月25日から27日に行われます。FRBの、年間で最大のイベントです。

中央銀行の習性

最初に申し上げなければならないことは、日銀、FRB、ECB(三大中央銀行)は、いつも経済見通しを誤り、バブルの発生や崩壊という不適切な結果を招く習性があるということです。

その原因は、中央銀行は経済と金融を「政治的なバイアス」をいれて予想するからです。低金利とマネーの増発とは逆のインフレの抑制を、世論に押される政権が要求します。

二番目に、中央銀行はマネーの増減により、好況または物価の低下にもっていけると考えていて、自分の金融力を過大に評価していることです。

中央銀行の「全能感」の元になっているのは、シカゴ学派の元祖フリードマンが作った「マネタリスト」の幻想です。幻想を受け次いでいるのが、MMT(現代貨幣理論)と一体の新自由主義(=グローバリズム)です。

中央銀行は、

・誤った学説と、政治的なマネー政策にもとづいて、
・誤った金融政策をとってきました。

過去、現在、そして未来も、です。

このため、

・中央銀行の政治的バイアスがかかった利下げと信用の拡大(量的緩和)よって、バブル経済を引き起こし、
・インフレになったあとの利上げと信用縮小(QT)によって、不良債権を増やし、金融危機を引き起こします。

FRBのB/Sの急拡大(2年で2.25倍:4兆ドル→9兆ドル)と、3倍に上がった株価を参照し、「現在の株価と不動産はバブル価格ではない」と言い切れる人は、いないでしょう。

実質効果はゼロだった日本の異次元緩和

2013年4月、日銀の新総裁に就任した黒田氏は「異次元緩和によって、2年で物価を2%に上げ、実質GDPは2%成長する」と宣言し、円の量的緩和(累積で500兆円)を開始しました。

アベノミクスの柱が、ゼロ金利の超金融緩和でした。

7年、8年経っても消費需要は増えず、物価は上がらなかった。2013年からの物価上昇は消費税の増税分の5%だけだったのです。

2014年の2.7%と2018年の0.99%上昇は消費税増税からです。2013年から2021年の、消費税増税(5%)を除く、物価上昇は8年間を平均するとほぼ0%です。

日銀の量的緩和は、目標だった2%インフレには効果がなかったのです。日銀は、手段を間違えていました。
参照:日本のインフレ率の推移-世界経済のネタ帳

なお現在の消費者物価の、2.5%の上昇は、

1)米国のエネルギー生産の抑制
2)異常気象による生鮮食品の不作
3)コロナでのサプライチェーンショック
4)ウクライナ戦争からの輸入物価高騰
5)円安

という、5つの複合要因によるものです。

500兆円を使い、50円(-48%)の円安にした日銀の異次元緩和は、物価上昇という目的に照らすと、誤ったものでした。

1)金融危機の対策、
2)株価と資産価格上昇、
3)通貨の下落の4項に対しては、量的緩和が正しい。

しかし、日本の物価と経済成長に対しては、誤った手段でした。

マネタリズムでは「物価は貨幣現象」としています。マネー量が増えれば物価は上がってインフレになり、マネー量が減れば物価は下がってデフレになるとします。
(注)M(マネー量)×V(流通速度)=P(物価水準)×T(実質GDP)…フィッシャー等式

日銀の異次元緩和は、「物価は貨幣現象」という誤った学説に依拠していたのです。

間違った処方薬を投与した医療と同じように、もともと、間違えていました。金融政策と医療の適切は、警備と同じように、結果で判定すべきものです。

現在の日銀は8年の失敗の結果反省をしているでしょうか。反省は謝ることや、今回の警察のように責任をとって辞任することではない。

組織として、政策の結果生じた不都合なことの原因を究明し、今後、同じ誤りを繰り返さないように、原因対策を立案して実行することです。これが、仕事の結果責任を果たすことの、真の意味です。

日銀とFRBは、量的緩和を実行したマネタリズムと、MMT(現代貨幣論)からは決別しなければならない。

Next: 物価予想を外し狼狽したジャクソンホール会議までのFRB

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー