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東京都“バニラカー”への規制強化へ。プラモ化&『天気の子』にも登場の“歓楽街の象徴”も「女性へのヘイト」との声もあがり消滅の可能性も

トラックの荷台に大型広告を掲示する「広告宣伝車」に関して、東京都はデザイン審査の対象を、都内を走行する全車両に拡大する方針を固めたと報じられたことが、波紋を呼んでいるようだ。

都内においては2011年に改正された東京都屋外広告物条例の施行規則に基づき、都内で走行するには、公益社団法人「東京屋外広告協会」のデザイン審査で承認を受けたものに限るとしていたが、近年は審査を受けない都外ナンバーの宣伝車が目立つようになっていたという。

都は、審査対象を都内ナンバーの車に限定したことが、規制の抜け道になっているとみて、今年度中にも施行規則の改正作業に着手し、対象拡大に踏み切ることに。関係者によると、風俗営業の広告は協会の審査基準に照らして、承認を得られない可能性が高いという。

“京都版”シックなバニラカーも存在

広告トラックやアドトラックとも呼ばれる広告宣伝車といえば、例えばアーティストの新曲リリースなどのPRでも街中を走らせるケースもあるが、今回報道されている件で、ある種“狙い撃ち”されているのはそれではなく、どうやらホストクラブなどの風俗店そのものの宣伝、またはそんな風俗店専門の求人サイトのPRを行うトラックのようである。

その手の広告宣伝車のなかでも有名な存在といえば、「バーニラ!バニラ!高収入!」というコマーシャルソングでお馴染みの、高収入求人情報サイトのPRを行う、その名も「バニラカー」。

2010年代半ばから街を走り始めたというバニラカーだが、ド派手なラッピングもさることながら、一度耳にすると忘れない中毒性のある音楽も相まってか、多くの人々の間である意味での“歓楽街の象徴”的な存在として認知されるに至り、果てはプラモデル化も過去にされたうえに、新海誠監督のアニメ映画『天気の子』においては、新宿・歌舞伎町を走る姿が描かれ、ちょっとした話題となった。

そんなバニラカーだが、都内の繁華街限定だと思いきや全国各地に様々なサイズの車体が走り回っているといい、過去には地域ごとの限定デザインのバニラカーが稼働していたということ。また、過度な色遣いの広告や看板などがNGな厳しい景観条例が存在する京都においては、それに抵触しないよう、全体が薄い茶色でまとめられるなどシックなデザインのバニラカーも存在するという。

いっぽうでバニラカーといえば、あのお馴染みの曲を大ボリュームで流して走行しているところが、非常に騒がしいと眉を顰められることが多いのだが、実際のところは地域によって異なる音量制限を守り、さらに学校や消防署、病院の前などではスピーカーをオフにして走行しているのだとか。ド派手な外見と大音量で我が物顔で街を行くといった印象もあるバニラカーだが、“京都版”のデザインの話を含めても、実はかなりの配慮を払いながら走っているようなのだ。

「子どもがアノ歌を真似する」との批判も

しかしながら、そうは言ってもバニラカーは、PRしているのが性風俗やそれに準ずる業態を専門とした求人サイトということで、デザインがどぎつさや騒がしさの前に、存在すること自体がNGと考える向きも結構多い模様だ。

今回の報道を受けても、「公共の場であれほど堂々と女性を性売買や搾取へと引き寄せる社会はあまりに異常」「女性へのヘイト」などといった声もあがっている状況。バニラカーに描かれる女性キャラクターのなかには、目が“¥マーク”になっているものもあり、そういった点も看過できないといったところなのだろう。また他には「子どもたちが真似して歌う」といった、青少年への悪影響を訴える声もあるようだ。

ただいっぽうで、報道にあった東京屋外広告協会による審査は「公共空間にふさわしい」「街区の景観への配慮」「人々に不快感を与えない」などを基本方針にするとのことだが、それらの基準があまりにも曖昧すぎで、これでもって規制を行うのは何かと問題があるのでは……といった声もあがっているなど、SNS上の反応は賛否両論といったところのようだ。

場所や状況に応じて音量を調整したりデザインを穏やかなものにしたりと、しなやかに対応してきた印象もあるバニラカーだが、今回は風俗店やそれに関連する業態のPR自体がNGとなりそうなだけに、果たしてどのように対処するのか。あるいは東京の街からバニラカーが姿を消す事態となるのか、今後の動向が大いに気になるところである。

Next: 「バニラの求人カー潰すなら選挙カーも潰してくれよ」

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