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イオン、いなげやを子会社化。首都圏での“売上高1兆円&1,000店舗”に前進も「どこもトップバリュだらけに…」とスーパーの没個性化を案ずる声も

首都圏を地盤とする大手食品スーパー「いなげや」が、イオンの子会社になる方向だと報じられたことで、利用者などの間で大いに波紋が広がっているようだ。

報道によれば、イオンのいなげやへの出資を現在の約17%から50%超に引き上げることで、連結子会社化する方針を固めたといい、イオンはいなげやへのTOBでの株式取得などを検討しているとのこと。光熱費や人件費などといった経営コストが増すなか、両社は商品調達などを共同で進め、収益力の向上を目指すものとされる。

鮮魚商として1900年に東京都立川市で創業した「いなげや」は、現在は東京・埼玉・神奈川・千葉の1都3県で食品スーパーを132店舗(2022年4月時点)、さらにドラッグストア「ウェルパーク」も同様のエリアに140店舗(2022年3月時点)を展開している。

業績低迷でネットスーパー事業の拡大も進まず?

近年では関西圏に展開する「関西スーパー」との統合を巡って、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社と、関東地方を地盤とするオーケーとが最高裁まで争ったことが大いに話題となるなど、再編の動きが活発なスーパーマーケット業界。

そのいっぽうで、業界の雄であるイオングループの巨大化も顕著といったところで、2022年には愛媛県松山市に本社を置くスーパー・フジが、イオングループのスーパーマーケット運営会社のひとつであるマックスバリュ西日本と経営統合し、イオンの子会社になるという動きもあった。

そんななか、全国的な知名度は無いものの、都内やその近郊に住む人々にとっては、そこそこ知られた存在でもあった「いなげや」。イオンとの縁は、2002年に同社が筆頭株主になったことから始まり、その翌々年に両社は業務提携を結ぶことに。いなげやの店舗にイオンのPBであるトップバリュの商品が一部並んでいることも、日々利用している者にとってはお馴染みの光景といったところである。

しかしながら、「いなげや」もここ数年は、コロナによる行動制限が徐々に緩和されたことで内食需要が減退、また物価高に起因する消費者の買い控えや水道光熱費の増加も響き、業績はお世辞にも良くなかった模様。今年2月に発表された2023年3月期第3四半期決算によれば、4~12月の営業利益16億400万円と前年同期比で38.1%減という苦しい数字だったようだ。

そんな「いなげや」の苦境ということで、ある意味で象徴的なのが、最近では大手スーパーの多くが導入しているネットスーパーへの対応。一応は「いなげやネットスーパー」なるサイトがあるものの、実のところ楽天のプラットフォームである「楽天全国スーパー」を利用したもので、その拠点店舗数は現状5店舗に留まっている状況。先述した経営状況もあり、こういったデジタルへの投資も、いなげや単体では限界を迎えつつあったというところのようだ。

各スーパーの“没個性化”を案ずる声も浮上

いっぽうでイオン側は、「いなげや」を連結子会社として取り込んだ後は、同じくイオン系スーパーによる共同持株会社「ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)」と経営統合させる計画だという。

マルエツ・カスミ・マックスバリュ関東という、関東地方に展開するスーパー3社で形成されるU.S.M.Hだが、かねてから志を同じくする首都圏のスーパーマーケットに広く参画を呼び掛け、ゆくゆくは売上高1兆円、1,000店舗体制を構築するという「関東における1兆円のSM構想」を目指しているとのこと。

現在、3つのスーパーを合わせて約530店舗を擁し、売上高は約7,000億円規模というU.S.M.Hだが、そこに132店舗&売上高約2,500億円のいなげやが合わされば、店舗数はともかくとして売上高に関しては、構想の達成は目前といったところのようだ。

ただ今回の件も含め、各地のスーパーがことごとく“イオン化”していく流れに関しては、消費者からはあまり歓迎されていない様子で、SNS上からは「スーパーはそれぞれ個性があって そこが好きなのに」「イオンのPBばっかり置かれるとかは嫌だな」などといった声も多くあがっているところ。

U.S.M.Hとの経営統合となれば、現在のマルエツやカスミのように、いなげやという名前自体が今後も存続することは間違いなさそう。だが、トップバリュ商品の“浸食”などによる品揃えの没個性化に関しては、やはりある程度は避けられないだろう……というのが、多くの方々の見方のようである。

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