東京23区内でシェア7割を誇る民間の火葬場が、ここ数年で相次ぐ値上げを行っているとして、都民を中心に動揺する声が広がっているようだ。
東京博善、また値上げだって。休憩室はかそうに伴って発生するもんだから実質的な火葬料の値上げです。税込で15,500円の値上げです。まじで、ヤバイレベルです。 pic.twitter.com/QfPoQuosXM
— 佐藤信顕@葬儀葬式ch 日本一の葬祭系Youtuberです (@satonobuaki) April 28, 2023
価格改定を予定しているのは東京博善で、葬儀を行う式場とその控室の室料は今月13日の通夜より、また火葬前に遺体と対面するお別れ室、さらに火葬中の待ち時間などに利用する休憩室などは同14日の火葬より、軒並み値上がりするとのこと。
東京博善は値上げの理由に関して「エネルギーコスト上昇に加え、人件費や諸物価の高騰もありやむを得ず改定をさせていただく」としている。
「値上がり前の今がチャンス」との声も
一般的に火葬場といえば、その地の自治体が建設したうえで運営しているといったイメージが強いが、東京23区に関しては9か所ある施設のうち公営のものは2か所だけ。代わりに民間企業の施設が多くの火葬を担うという、日本国内においても珍しい状況となっている。
そんな東京23区内にある7か所の民間火葬場のうち、町屋・四ツ木・桐ケ谷・代々幡・落合・堀ノ内の6か所を運営しているのが東京博善。明治時代の創業で、大正期にはすでに複数の火葬場を都内に展開していた会社なのだが、2020年には印刷事業を手掛ける広済堂ホールディングス(現社名)の完全子会社に。
さらにその広済堂ホールディングスも、近年はラオックスの社長を務める中国人実業家・羅怡文氏のグループ企業によって株を徐々に買い進められ、22年には40%超の広済堂株を押さえるまでに。これによって東京博善は、中国資本の勢力下に入ることとなった。
この広済堂による完全子会社化、さらに中国資本の傘下に組み込まれていった時期と並行し、東京博善は度々強引な値上げを行うようになったということで、21年には「最上等」と呼ばれる一般向けグレードの火葬料金を59,000円から75,000円と、実に16,000円もの値上げを断行。
23区内の公営の火葬場をみると、臨海斎場の場合だと港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区といった近隣の組織区住民なら、火葬料は44,000円で済むということから、それと比べればかなりの価格差が付く形となっているのだ。
さらに東京博善では22年6月から燃料費特別付加火葬料、いわゆる燃油サーチャージも徴収するように。現在は火葬1件あたりで12,200円かかるということだが、国際線などの航空券購入時に支払う燃油サーチャージはよく耳にするものの、葬儀業界では前代未聞ということで、大いに物議を醸したのだ。
今回も火葬料自体は据え置きのようだが、葬儀自体を東京博善の施設で行わないとしても、火葬を行うにあたっては休憩室などは併せて利用するケースがほとんどということで、SNS上からは実質上の火葬料値上げとの声も多くあがっており、なかには「値上がり前の今がチャンス」といった、なんとも笑えない冗談までもが飛び交っているようだ。
多死社会を迎えるも都心の火葬場不足の解消は困難
このように手を変え品を変えといった様相の火葬料の値上げ。23区民にすれば、他にリーズナブルな施設があればそこに頼みたいといったところだが、先述の通り区民などなら安価に利用できる公営の火葬場は23区内には2か所しかなく、選択肢は限られているというのが正直なところ。
さらに、コロナ禍の真っ最中などは特に顕著だったが、近年23区内のみならず都内においては火葬場不足が深刻な問題となっており、死亡後もなかなかすぐには火葬ができず、下手をすれば一週間以上待たされるという話もザラと、それこそ選り好みなどできる状況ではないのだ。
日本では、団塊世代が後期高齢者となる2025年以降は、年間150万人以上が死を迎える、いわゆる“多死社会”に突入するとされ、2016年に131万人だった年間の死者数は、ピークとなる2040年には168万人にのぼるとの予測も。
しかしながら、今後新たに23区内に官民問わず火葬場が新設されるかというと、ある程度の広さが必要な用地の確保も都心では困難なうえに、住民感情の問題も立ちはだかるのも必至ということで、どうみても不可能だといった状況だ。
そもそも中国資本が東京博善を手中に収めた狙いとしては、中国国内でも土葬から火葬へと移行するなかで、日本が持つ最先端の火葬ノウハウを得ようとしている、さらには遺灰からの“貴金属抽出”もバカにならない……などと、様々な思惑が取沙汰されている。
だがそれ以前に、今後も需要の増加が間違いなく見込まれ、そのうえ“商売敵”の存在が皆無という、東京23区内における火葬事業そのものが相当“美味しい”ということで、目を付けられた可能性も、こうしてみていくと大いに考えられそうなところである。
民間企業であれば、ある程度の営利に走ることも致し方無いといったところだが、とはいえ火葬場といえば公共のインフラといった側面もあるのも言うまでもない話。それだけに、度重なる火葬料の値上げによって同地域の公営の施設、あるいは周辺他地域の施設と比べても大きな金額差が生じている事態に対し、都民の不満は募るばかりといった状況だ。
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