SBIホールディングス(HD)が引き金を引いた、ネット証券の売買手数料のゼロ化は、想像されたとおり、各社に広がりました。象徴的な意味では、これはすごいことですが、コストを気にする投資家にとっては、実はそれほどの影響はなかったりします。いったいどういうことか?投資家でもあるブロガーの九条が、実際の経験をもとに、これまで手数料がどうだったのか、そして完全無料化によって何が変わるのか、紐解いてみたいと思います。(九条)
プロフィール:九条(くじょう)
ブロガー。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア/FIREを実現している。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、不動産投資などを行うインデックス投資家で、リバタリアン。マイクロ法人2社保有。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛している。ブログ『FIRE:投資でセミリタイアする九条日記』を運営。
ネット証券で広がる「手数料無料」
SBIホールディングス(HD)が引き金を引いた、ネット証券の売買手数料のゼロ化は、想像されたとおり、各社に広がりました。SBIHD傘下のSBI証券はもちろん、そのライバルである楽天証券も国内株に関する手数料を無料化し、コストをかけずに取引できる環境が整ったのです。
一方で、投資家にとって、これがどのくらいインパクトがあることなのかというと、実は少々微妙だったりします。というのも、ここ数年各社は段階的に手数料の無料化を進めてきており、コストを気にする投資家にとっては実質的にほぼ売買手数料はかかっていなかったからです。
投資家でもあるブロガー、九条が、実際の経験をもとに、これまで手数料がどうだったのか、そして完全無料化によって何が変わるのか、紐解いてみたいと思います。
すでに1日100万円までは無料だった
SBI証券、楽天証券をはじめ、マネックス証券を除く各ネット証券は、「一日定額制プラン」の拡充を進めてきました。これは「一日あたり◯◯万円以内なら手数料無料」というプランです。
その金額も徐々に増加し、直近ではSBI証券、楽天証券、auカブコム証券、GMOクリック証券などの無料枠は1日あたり100万円に増えていました。松井証券は50万円までですが、これによりほとんどの株式は無料で売買できるようになっていたのです。
東京証券取引所は2022年10月に、上場株の投資単位を50万円未満に引き下げるよう要請しました。投資単位が高額な企業を減らして、個人の取引機会を広げる狙いです。
その結果、ファーストリテイリング(単元価格約350万円)やキーエンス(単元価格約560万円)などは相変わらず高単価ですが、任天堂が10分割、オリエンタルランドも5分割を行うなどして、単元価格を下げました。
直近では、単元価格が100万円を超える銘柄は42社。東証要請時の39社からは、増加してしまっていますが、3,900社余りの上場企業のうち、無料で買えない銘柄は40社程度だったわけです。
つまり1日定額プランを利用すれば、ほとんどの銘柄は手数料無料で購入できるし、日にちをずらしていいのであれば、1ヶ月で2,000万円程度の売買が可能です。高単価な銘柄を売買したいとか、デイトレードのような頻繁な売買がしたいとかといった理由でない限り、実質的には手数料は無料化していました。