完全無料化の恩恵を受けるのは誰か?
SBI証券の直近(8月4日)の決算説明資料によると、売買手数料を示す「国内株式委託手数料」は四半期で55.9億円あまりとなっています。四半期の収益の14.6%です。楽天証券の場合、直近決算資料(8月2日)によると、直近半期の委託手数料は155億円。うち、オンライン取引の国内株は58%とされており、半期で90億円程度。収益の17.4%にあたります。
ちょっとした調整で手数料は実質ゼロにできるのに、これだけの手数料収入があるのは、プラン変更をせず、そこそこ高額な手数料を払い続けている人が、まだまだ多かったということを意味するでしょう。またはちょっと手間をかけるよりは手数料を支払うことを選ぶ人がそこそこいたということです。
これらの人にとっては、手数料が完全に無料になるわけで、嬉しいことだと思います。でも一方で、これまで手数料無料で取引できる方法はいろいろあったのに高額な手数料を負担し続けてきた人たちであり、手数料の多寡に関心がない人たちだともいえます。この人たちにとっては、手数料ゼロ化は恩恵ではあるものの、「だから何?」という感じでしょうか。
唯一、無料化の恩恵を大きく受けられるのは、実は法人口座ではないかと思っています。比較的審査のゆるい個人とは違い、法人では決算書などによる審査を通過しないと信用取引口座が持てません。そのため、信用取引を使った手数料無料化のハードルは、法人においては高かったと感じています。
それが今回、法人においても手数料が完全に無料になります。法人を使って日本株を売買している人にとっては、無料化によって投資の幅が広がる。コストコンシャスな投資家にとって、実は一番うれしいのは法人による取引のコストがゼロになることではないでしょうか。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年10月26日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による