手術の「要・不要」は高等裁判所で判断?
最高裁は25日、「生殖機能がないこと」を求める要件は違憲で無効だとの判断を示しましたが、一方でもう1つの、「変更する性別の性器に近い見た目をもつこと」を求める要件については判断を示さず、審理を高等裁判所でやり直すよう命じました。
臼井さんは、2019年の決定で、手術無しで性の別の変更を認めないことは「憲法に違反しない」とされていました。
申立人の性別変更を認めるかは、今後、高裁で判断されることになったことについては、申立人は「非常に残念」とコメントしているということです。
「生殖機能がないことは違憲」としながら、「手術」が必要かどうかの判断は、最高裁では決定をくださず、高等裁判所に判断をするように差し戻しました。
最高裁の判決に関しては、朝日新聞や読売新聞が詳しく解説しています。
最高裁での決定はまず、自らの意思に反して身体を傷つける「侵襲」を受けない自由は重要な権利だとして、「幸福追求権を定めた憲法13条で保障されている」と指摘したのです。
身体への強度な「侵襲」である手術を余儀なくさせることはこの自由の制約にあたり、必要かつ合理的でない限り、許されないとしました。
特例法制定以降の社会の変化、医学的知見の進展なども踏まえ、要件は「意に反して身体への“侵襲”を受けない自由を侵害し、憲法13条に違反して無効」と述べました。
「当事者が子をもうけて問題が生じることは極めてまれだ…」「生殖不能条件」への疑問ですね。
「性別と近い性器の外観」の規定が問題に
性別変更を申し立てた人は1万人を超え、性同一性障害への理解も広まりつつあるとし、「規定による制約の必要性は低減している」としました。
また、医学的知見の進展を踏まえて当事者ごとに必要な治療は異なるとし、「治療としての手術を求める規定は医学的に合理性を欠く」と言及、国際的に生殖不能要件のない国が増えていることも考慮し、「身体への“侵襲”を受けない自由への制約は過剰で、規定は必要で合理的なものとはいえない」と結論付けました。
朝日新聞では、決定において「3つのポイント」で整理しています。
・性別変更に、精巣や卵巣を切除する手術を求める法律の要件は違憲・無効
・今後は性別変更ではこの手術を受ける必要はなくなる
・ただし、性器の外観を似せる要件は残り、そのために別の手術が必要になる当事者も相当数残る
「生殖不能要件」は「違憲」となり、今後の見直しの対象となりますが、申立人側は「変更後の性別と近い性器の外観を備えている」とする「外観要件」も違憲だと主張しています。
これに関して大法廷は「2審で判断されていない」として判断を示さず、審理を高等裁判所に差し戻しました。
結局、申立人の性別変更は認められておらず、高等裁判所で可否が改めて審理されることになります。