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なぜ年金は溶けたのか?「GPIF運用損5.3兆円」の危なすぎる内訳=斎藤満

従来比率のポートフォリオなら損失は出なかった

実際、2014年10月に運用を見直し、株や外貨資産の買い入れを増額してからは、日銀の追加緩和も重なり、円安、株高が進みました。2015年半ばには、ドル円が125円台まで円安となり、日経平均株価は2万円を大きく超えて上昇しました。

その点では、リスク資産傾斜が、短期的にはGPIFの収益拡大のみならず、アベノミクスへの期待を高める面はありました。

しかし、これはあくまで短期効果で、長い目で見ると、主要国の金融緩和が究極まで進み、債券を中心に市場が異常な事態になっています。何と、世界にはマイナス金利の国債が10兆ドルもあります。

長期金利がマイナスということは、それだけ債券価格が異常な高騰を見せていることになり、これが株価や不動産価格などにも影響して、バブルを生みだしている面があります。

実際、日本の株価も2万円台を付けてからは次第に低下傾向となり、為替も2015年の6月を境に、以降は次第に円高ドル安に向かい始めました。

GPIFが株や外貨資産に傾斜して1年も経たないうちに、GPIFのポートフォリオは、ハイリターン局面からハイリスク局面にシフトしてしまったことになります。いかにもタイミングが悪すぎました。

ちなみに、ポートフォリオが従来の比率、つまり国内債券60%、国内株12%、外国債券11%、外国株12%のままであったとすると、国内債券の利益が3兆円以上に拡大し、内外株の損失が約半分になるので、2015年度の全体損益はほぼゼロとなり、5兆円を超える損失を出さずに済んだことになります。

「長期的な視点で見てほしい」のウソ

政府やGPIFは短期の成果で判断せずに、長期的な利益を見てほしいと言います。

そこでこの10年間の累積運用利益額をチェックしてみると、全体の利益は29.7兆円ですが、その内訳は国内債券で13.7兆円、国内株で1.8兆円、外国債券で4.8兆円、外国株で9.4兆円稼いだ形になっています。

この10年では国内債券がもっとも利益を上げ、次いで外国株となり、国内株が最低でした。

この結果を見ても、国内債を減らし、株や外国資産にシフトしたのは、長期の傾向を反映したというより、株価押し上げ、円安狙いとしか思えません。

その株や為替がGPIF自らの運用で押し上げられ、しかも主要国の異常な緩和策の中でバブルになるなど、ゆがみが出ているとすれば、今後の運用にも大きな影響が出ます。

Next: 世界的な運用危機で、さらなる損失拡大のリスクが高まっている

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