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認知症の親に、無理矢理「遺言書」を書かせると一体どうなる?=山田和美

相続権を失い、罪に問われる可能性も

確かに、遺言書を作ること自体はできてしまうかもしれませんが、判断能力があやふやな時期に作った遺言書は、後の争いのもとになります。

例えば相続人が複数いて、そのうちの1人に有利な遺言書が残っていた場合、よほど何らかの事情がない限り、他の相続人としては、やはり良い気はしないでしょう。

それに加えて、遺言書を作成した日付から見て「そのときすでに、父は認知症っぽい症状が出ていたはず」と思えば、遺言書が無効ではないかという訴訟に発展する可能性は十分にあります(日付から偽造するなど、言語道断です)。

その結果、遺言書を無理に書かせたとか、偽造・変造したという事実が判明すれば、財産をすべて受け取るどころか、相続人の権利をはく奪され、財産を一銭も受け取れなくなる可能性もあります。

さらに、刑法上の私文書偽造の罪に問われる可能性もあるわけです。

無理に自筆で書かせるのは危険

また、実際には偽造したわけではなく、遺言者本人が「全部あなたにあげたい」と言っていて、自分で頑張って書いたような場合でも、それを証明することは困難で、せっかく作っても手続きに使えない可能性も十分にあるわけです。

そのため、遺言者本人の判断能力が怪しい場合には、無理に自筆証書で遺言書を書かせることは、避けてください

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本人が書く気がなかったり、また遺言書が何なのかも理解できていないような状況で無理に書かせたり偽造することは、もちろん絶対にしてはいけません。

そして、本人が「遺言書を残したい」と言っているにもかかわらず、判断能力が怪しい場合には、無理に自筆証書で作ってしまうのではなく「公正証書」での作成を検討しましょう。

公正証書であれば100%問題がない、ということではありませんが、公証人のほかに証人も2名立ち合いますから、作成した時点の証拠が残らない自筆証書に比べたら、「作成したのに、後から判断能力がなかったとされて、無効になる」というリスクは、格段に低くなります。

遺言書を作る目的は、作ること自体ではなく、使うことのはずです。このことを忘れず、専門家も活用しながら、最良の選択肢をきちんと検討されることをおすすめします。

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こころをつなぐ、相続のハナシ』(2017年11月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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