2000年のITバブル崩壊の悪夢と、バフェットの賢明な投資判断
ハイテク企業への投資と聞くと、40代以上の投資家は少し疑心暗鬼になってしまう所があります。それは2000年前後に発生したITバブル崩壊の悪夢が頭によぎるからです。
IT企業が多いナスダック総合指数は、1996年には1000前後で推移していました。そこから1998年9月には1500、1999年1月には2000を突破し、2000年3月10日には5048(この時が頂点)に到達しました。
当時は会社名に「ドットコム」とついているだけで、事業実態にかかわらず株価が急騰するという奇妙な現象が生じていました。そのため、「ドットコム・バブル」とも呼ばれています。
このバブル相場が弾けて、さらに2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の影響も受けて、ナスダック総合指数は2002年には1000台まで暴落しました。
ウォーレン・バフェットはこのITバブルに一切、絡んでいなかったので、後に「バフェットの投資行動は正しかった」と高く評価されるようになりました。
バフェットがアップルを絶賛しはじめた
ITバブルの崩壊から約18年の時を経て、バフェットがアップルを絶賛するようになったのはやはり「iPhone」の存在が大きかったと思います。
故スティーブ・ジョブズ氏(以下、ジョブズ氏)は2007年1月9日のアップル製品の展示会で初めて「iPhone」を発表して、同年の6月29日に発売しました。
プレゼンの冒頭でジョブズ氏は「何年かに一度、全部を変えてしまう新しい商品が出現する」と述べました。
続けて「革命を起こす新しい商品を3つ発表する」と宣言しています。この3つの新しい商品は1つ目が「ワイド画面タッチ操作のiPod」、2つ目が「革新的携帯電話」、3つ目が「画期的なネット通信機器」。
ジョブズ氏のプレゼンを聴いていた会場の人々が驚きの声を挙げたのが、下記の動画の2分45秒前後です。詳しくは以下の動画をご覧ください。
<2007年1月9日 iPhoneのプレゼンテーション(日本語字幕)>
iPhoneの成功は疑問視されていた
ジョブズ氏はiPhoneを「革命を起こす新しい商品」と主張していましたが、当時、アップルのライバル会社やパートナー企業の経営陣やアナリスト達はiPhoneの成功を疑っていました。
「BlackBerryにとって大きな潮の変わり目などいうのは、言い過ぎだと思う」
――カナダ Research In Motion 共同CEO(当時)ジム・バルシリー氏
「iPhoneがそこそこの市場シェアを獲得する可能性はゼロだ。あり得ない」
――米Microsoft CEO スティーブ・バルマー氏
「iPhoneは、弊社が提携先第一号にならなくてよいと思う製品だ」
――米Verizon 社長兼最高実務責任者 デニー・ストリングル氏
「Appleは、ある程度シェアを獲得できなければ、iPhone用クライアントを開発するようアプリケーションベンダーを説得するのにかなりてこずるだろう。かといって、サードパーティーのアプリケーションがなければシェアは伸び悩む、そんなジレンマに陥る可能性がある」
―― 米J. Gold Associates創始者 ジャック・ゴールド氏
上記のコメントは11年の時を経た今から読み返すと、どれもこれもトンチンカンな内容になっています。
当時はテクノロジーに詳しい人達でも、iPhoneが世界を変えることを正確に予想できなかったのです。