東京五輪の最高責任者は誰なのか
まず、オンブズマンが機能していないと言われています。
オンブズマンは、スウェーデンで始まった国民に代わって行政活動を監視し、また国民からの行政機関に対する苦情を処理する者のことです。
ただ、この東京五輪・パラリンピック全体の事業に対して、最高責任者が不在であることが驚きです。
2020年の東京大会には、東京都、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)という4つの団体がかかわっています。
つまり、「誰が最高責任者なのか」はあいまいで、予算が増えようが誰の責任にもならない状態でした。
東京都は、ほかの地方自治体と比べて桁違いに予算が潤沢にあり、経済的な危機意識が希薄だったのではないかという意見もあります。
「知事交代が続き空白期間を生んだ…」「有名人が知事になったから…」。これが費用が膨らんだ理由になるのでしょうか。もうわけがわかりません。
オリンピック・パラリンピックは東京都の問題で、日本全国の関心事ではないというところに、ある意味、盲点があったのかもしれません。
また、当初予算には維持費を考えていないという話もあります。
今までの大会経費は…
運営費の史上最高額は2014年のソチ冬季オリンピックで、約5兆円が投入されました。なかでも交通インフラの整備が最も高く、約3兆円が投入されました。
この大会は、プーチン大統領が国を挙げて世界にロシアをアピールする要素もあり、オリンピックをきっかけに国内のインフラ整備を大規模にオリンピック費用として計上させたことも考えられます。
オリンピック経費に何を見積もるのかは国によって異なるので、一概に横並びに比較できません。楽天証券が「オリンピックの運営費比較」をホームページに掲載しているものを見てみますと…
2014年冬季:ソチ五輪 500億ドル
2008年夏季:北京五輪 430億ドル
2004年夏季:アテネ五輪 150億ドル
2016年夏季:リオデジャネイロ五輪 108億ドル
2012年夏季:ロンドン五輪 104億ドル
2000年夏季:シドニー五輪 66億ドル
2006年冬季:トリノ五輪 36億ドル
2010年冬季:バンクーバー五輪 17億ドル
2002年冬季:ソルトレイク五輪 12億ドル
となっています。楽天証券以外にもいろんなところが同様の比較を掲載していますが、その数字はバラバラで、何を費用に含めるのかで全然違ってきています。
韓国のソチ五輪は新幹線整備費用も含まれているという話ですし、リオデジャネイロ五輪では経費に含ませていないものが多々あるようです。
また、開催後にも予定外の費用が出てくるようで、オリンピック費用は正確に把握できないもののようです。
ただ、東京五輪・パラリンピックに関しては、なぜ、7,000億円が3兆円にまで増えるのか。それなのに、どうして組織委員会は、3兆円ではなく、1.6~1.8兆円で開催できるといまだに言っているのでしょうか。さっぱりわかりません。
猪瀬都知事(当時)は「われわれは45億ドル(約4500億円)の開催準備金をすでに積み立てている。これはキャッシュで銀行にある」と述べていましたね。
「東京五輪費用は少なめに、大会開催後の予定収入は多めに…」。これですべての収支を合わせようとしている感じです。