米景気はいつまで続くか
現行の米国の景気拡大局面は来年6月で10年となり、7月には史上最長を記録する。90年代のクリントン政権のときの120ヶ月を上回ることになる。しかし、米国内の人口動態の変化により、米国のGDPの潜在成長率は2%に低下する可能性がある。
1929年以降の大恐慌の寸前の1928年に大統領選挙に立候補した共和党のフーバーの選挙公約は「すべての鍋にニワトリを、すべてのガレージに車を」であった。その後大恐慌時代、アメリカはホワイトカラーまで含めた史上最大の失業に悩んだ。
そのトラウマを引きずってか、FRBの二大使命は、(1)通貨価値の安定(これは世界中のどの中央銀行でも共通した主目的である。日銀はこれがたった一つの使命である)と、(2)雇用の安定、である。これがFRBの二大使命である。
そこで米ギャラップの調査によると、米国人の現代の最大の問題は政府に対する不満であり、経済に対する懸念はほとんど下位の方だと言う。米経済は強いと考えられている。少なくとも完全雇用が実現されている。大恐慌時代の寸前にフーバーが言った「全ての鍋にニワトリが入った状態」が実現されている。
労働市場は数十年ぶりの好調である。失業率は1960年代のジョン・ケネディ大統領時代以来の低水準である。この米国人の「すべての鍋にニワトリが入った状態」はFRBの二大目標の一つが完成されたということになる。
過去数十年、米国のインフレの鍵となってきたのはエネルギー価格の上昇である。つまり原油問題だ。来年の経済見通しで米国も日本も注目すべきなのは原油価格の問題であろう。
FRBは周到かつ賢明だった。2016年後半から既に「出口戦略」を確実に実行しつつある。16年後半から今まで2年間で0.25%ずつを8回値上げして合計2%を利上げした。これはリーマンショック前のレベルに同じに戻した。
万が一景気が後退した場合でも、いつでも利下げでカツを入れる準備ができている。ECBもそれに倣いつつある。この点で最も日銀が遅れていると言わねばならない。
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