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2019年末までに日経平均4万円超えか、今年の「10大リスク要因」から円・日本株の動向を読む=矢口新

2019年のリスク要因その3:トランプ政権、ロシア・ゲートと案件処理能力の低下

米国の歳出には毎年度の上限が設けられているが、財政再建のために2020年度の上限は2019年度よりも低い水準に設定されている。一方で、財政赤字は拡大しており、新たな法律によって上限を引き上げなければ、米国は政府機関の閉鎖に加え、緊縮財政を強いられることになる。

予算面では、軍事、教育、医療、エネルギー、退役軍人、労働関連プログラムについては、すでに年度末の来年9月30日までの予算1兆ドル近くが議会で承認されている。これは、政府業務全体の約75%に相当する。仮に予算審議が行き詰まっても、連邦政府が完全に閉鎖されることはない。例えば、国境警備、空港警備、FBIの業務、NASAの業務など、必要不可欠と判断される業務は継続される。

もっとも、閉鎖され自宅待機となった職員も、必要不可欠な業務を継続する職員も、予算問題が解決するまで給与は支払われない。やはり、政府機関の閉鎖は極力避けねばならないのだ。

ところが、トランプ政権の高官離職率は65%もあるので、案件処理能力の低下が危惧されている。政権の能力不足で予算審議が進まず、政府機関が閉鎖される事態も想定内となっているのだ。

また、政策的に「影のプランナー」の虎の尾を踏んだ形のトランプ政権には内外に敵が多いが、高官離職率の高さは、政権を支える味方が極めて少ないことを強く示唆している。

12月23日のCNBCの報道によれば、トランプ大統領は、共和党支持のミリオネアの支持すら失ってきている。ミリオネア全体では、2017年にはトランプ再選の支持者が45%いたが、直近の調査では34%に低下した。

仮にロシア・ゲートで弾劾裁判となった時、民主党の「下院で過半数の賛成があれば訴追できる」のだが、共和党の「上院で裁判が行われ有罪の判決には出席議員の3分の2の賛成が必要」なので、有罪になる可能性は低いと言い切れるのだろうか?

トランプ大統領のお騒がせな存在は世界経済のリスクだが、失脚はこれまでの政策が反故にされる可能性を伴うので、これもまた大きなリスクなのだ。

2019年のリスク要因その4:ブレグジットと、フランス・イタリア

英国のEU離脱は、英国時間2019年3月29日午後11時(ブリュッセル時間30日午前零時)に行われる。

ブレグジット投票から約2年半が経過したが、EUと英国との離脱に向けての合意は、その時からほとんど何も進んでいない。2018年11月にメイ首相がEUと交わした合意事項は、ほぼEUの主張を飲んだもので、これ以上の移行期間を置いても、EUが譲歩する見通しは何もない。英領北アイルランドと、アイルランド共和国との国境管理を人質に、このまま英国全体が無期限にEU法に従う可能性が出てきているのだ。

そこで、合意なき離脱か、再度の国民投票でブレグジットを反故にするかといった、両極端の可能性が高まってきている。では、ブレグジットを反故にし、EUに残留することに、果たして魅力があるのだろうか?

EUの欧州委員会は、2019年のイタリア財政赤字の対GDP比率を2.04%とする同国の提案を受け入れた。当初案では2.4%としていた。今年は1.8%だった。

財政赤字を拡大したい国は皆無だと言っていい。イタリアがEUと揉めてでも、財政赤字拡大の容認を勝ち取ったのは、景気をてこ入れする必要があるからだ。

最近のイタリアの経済指標を振り返ってみよう。

イタリア第3四半期のGDP改定値は前期比0.1%減、前年比0.7%増だった。2014年第2四半期以来のマイナス成長となった。内需が低迷した。

イタリア10月の失業率は10.6%だった。9月の10.3%から上昇した。

イタリア10月の製造業新規受注は前月比0.3%減、前年比2.0%増だった。工業販売は前月比0.5%減、前年比2.0%増だった。

イタリア11月の消費者物価指数は前月比−0.2%、前年比+1.6%だった。EU基準では前月比−0.3%、前年比+1.6%だった。11月の生産者物価指数は前月比−0.7%、前年比+4.5%だった。

イタリア11月の製造業PMIは48.6だった。10月の49.2から低下した。この指数は50を下回ると減速だとされる。

イタリア12月の消費者信頼感は113.1だった。11月の114.8から低下した。業況判断は103.6と、104.4から低下した。

どうだろう? イタリア政府としては財政出動でもして、景気にてこ入れしたいと考えて当然だ。しかし、EUが当初のGDP比2.4%案では制裁金を課すと脅したために、規模を縮小するしかなく、中途半端な景気対策しか取れなくなった。

イタリアだけではない。フィリップ仏首相は財政赤字のGDP比が来年は3.2%程度になる公算が大きいとの見通しを示している。そこで、仏政府はEUの承認を待たずに、アップルやグーグル、フェイスブックへの大幅課税を決定した。

英国がEUに戻る意向を示しても、発言力は以前のままには戻らない。戻ったところで、フランスやイタリアのような待遇を望んでいるのだろうか?

フランスやイタリアの苦境は、通貨金融政策を統一しながら、財政資金を統一せず、「口は出すがカネは出さない」というユーロ圏の構造的な欠陥からきている。とはいえ、ドイツ政府とドイツ国民が、ギリシャを含む各国と統一財政、統一年金制度を受け入れる可能性は限りなく低いために、この欠陥は直らず、フランスやイタリアの苦境は続く。

一方、ブレグジットによる英国の苦境は、どんなに厳しいものであるにせよ、一時的だ。例えば、英ポンドが半値になれば、関税が倍になっても何とかなるのだ。

英国人は、フランスやイタリアの窮状を見ているため、私はEU復帰よりも、「合意なき離脱」を選ぶと見ている。

Next: 世界の金融政策は「引き締め」へ。日本は量的緩和を続けていてよいのか?

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