増産に舵を切れば原油価格は40ドルまで落ち込む
一方、OPECとの協調減産継続に対するロシアの姿勢への不安や、米国の原油在庫の増加観測は上値を抑えやすいといえます。
OPEC主導の協調減産に関する先行き不透明感は、最近の市場の関心事になりつつあります。
年明けから協調減産に取り組んでいるOPECと非加盟産油国の「OPECプラス」は、減産を継続するかどうかを6月に決定する方針です。
ただし、ロシアの天然ガス大手ガスプロムの石油部門ガスプロムネフチの関係者が、協調減産が今年上半期で終了するとの見方を示しています。
さらに、ロシアのシルアノフ財務相が、OPECが増産に舵を切る可能性を示唆したことも売り材料視されています。
シルアノフ財務相は、米国との市場シェア争いでOPECとともに増産を決定するとの見方を示す一方、この通りになれば原油価格が40ドルまで落ち込む可能性があると発言しています。
サウジアラビアは減産継続に積極的とみられていますが、複数のOPEC関係者は、供給面の混乱が続けば7月から増産するとの見解を示しています。
一方、米国の製油所は、4-6月期に多くの保守整備作業を計画しているもようです。EIAの統計によると、今月の処理量は年初比で8.5%減となっています。
国際海事機関(IMO)は、大気汚染対策として、20年1月1日から船舶用ディーゼル燃料の硫黄酸化物含有量規制を実施します。
製油所は新基準に対応した燃料を生産するため、プラントの更新作業を進めているといいます。
4-6月期は通常、夏季のドライブシーズンを控え、ほとんどの製油所が増産し、在庫を積み上げる時期です。しかし、今年の4-6月期には日量100万バレル分の処理能力が停止される可能性が指摘されています。
そうなれば、原油在庫が積み上がり、思わぬ下落につながる可能性があります。これに、連動性の高い米国株の調整が加わると下げやすくなりそうです。
現在の原油相場は高値圏でのもみ合いが続いています。しかし、このような状況は続かないでしょう。
上昇・下落のどちらの可能性もありそうですが、上値はWTI原油でも69ドル程度と考えています。
過去に高値から20%下落した後のリバウンドの平均から見れば、69ドル前後が戻り高値のめどになります。
いまはサウジが供給を絞っていることや、OPECプラスの動きへの関心が高い状況です。
しかし、協調減産合意の枠組みがブレイクすれば、これは原油市場には甚大な影響が出るでしょう。
また、ロシアの動きには要注目です。ロシアは原油相場が55ドルであれば十分ですので、80ドル以上が欲しいサウジとは全く立場が違います。この点も理解しておきたいところです。
さらに、米国の産油量が伸び悩んでいます。この動きにも要注意です。つまり、原油のサポート要因になります。
これから北半球のガソリン需要期に向けて原油相場は上げやすくなる時期ですが、上記のような事情で今年は少し違った動きになるのかもしれません。
このように、原油市場を取り巻く環境は複雑化し始めていますので、様々な材料に目を配るようにしたいところです。
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本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2019年4月22日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場や金、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。
『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』(2019年4月22日号)より一部抜粋
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