【なぜ「多少、高くてもよいものを買いなさい」なのか?】
さて。名言を読む際の注意点はこれくらいにして、名言自体の解説に入っていきましょう。今一度、解説する名言を挙げておきます。
「まずまずの会社をすばらしい値段で買うよりも、すばらしい会社をまずまずの値段で買うほうがずっといい」
出典:『スノーボール(改訂新版)〔中〕――ウォーレン・バフェット伝』アリス・シュローダー著、伏見威蕃訳 日経ビジネス人文庫)
先ほどもお伝えした通り、この名言のポイントとは、バフェット氏が「よいものを安く買いなさいとは言っていない」点にあります。
つまり、これは「今、付いている値段が本当に『安い』のか『高い』のか、それとも『妥当』なのかが、あなたに判断できますか?」という、バフェット氏からの問いかけだということです。
通常、人が「安い」「高い」と感じるのは、何かと比較しているからです。
一般的には、似たもの同士を比較の対象にしています。仮に日用品を比較するのであれば、違うメーカーの同等商品を比較したり、ブランドなどから判断したりしているでしょう。
一方、投資の場合は、主に過去の銘柄価格との比較や、同じ業界か同程度の規模の会社、もしくは相場との比較などから判断していることが多いと思います。
けれど実際問題として、「そうした指標との比較が本当に正しいのか?」と言われたら、「そうだ」とは言い切れないのではないでしょうか。
たとえば、ある会社の10年間のチャート(株価の推移)の最安値と最高値を取って、「この会社の最高値がハイプライスで、最安値がロープライスだ」などと言ったところで、今後も同じ動きをするかどうかは誰にもわかりません。
<投資とは、まだ怒っていない未来を予測すること>
次に、これはもっとも大事なポイントなのですが、投資とは「まだ起こっていない未来を予測する行為」だということです。
たとえこれまで成長してきた会社だからといって、これからもそうなるという保証はどこにもないのです。
もともと、バフェット氏は企業分析のプロです。時には氏が自ら足を運んで、その会社の経営陣と意識のすり合わせを行い、投資するかどうかを決めています。
現在、バークシャー・ハサウェイの中核事業は保険事業ですが、中でも大きく成長している自動車保険会社のGEICO(ガイコ)は、そのようにして買収した企業の1つです。
今年、89歳になるバフェット氏は、その資金力を使ってさまざまな専門家から情報を収集した上で、そこに自身のもっとも貴重なリソース(資源)である時間を投入し、投資するかどうかの判断を下しています。
私たちとバフェット氏とでは、資金力も、人脈も、経験も、すべてが比べものになりません。そんな私たちに対して、氏は「今が高いか安いかよりも、未来の伸び代に賭けなさい」と言っているのです。
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