楽天は自らインフラを所有するMNOを目指す
携帯電話のサービスには大きく分けて2つのカテゴリーがあります。
・MNO:移動体通信事業者
・MVNO:仮想移動体通信事業者
前者は、通信回線や基地局などをすべて自前で用意し、自社のインフラを使ってサービスを提供する事業者で、これは設備産業として大きなコストがかかります。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は前者に該当します。
後者は、自社では何も保有せず、インフラを持つ事業者から回線や基地局などを借り受けてサービスを提供する事業者で、b-mobile(日本通信)やフリーテル(旧プラスワン・マーケティング、現楽天)、IIJmio(インターネットニシアティブ)といった事業者は、これらの3社から回線を借り受けてサービスを展開しているのでMVNOということになります。
格安SIMを提供しているのは、たいていがこのMVNO事業者となります。
この両者の関係にはある取り決めがあり、回線を所有する事業者が、MVNOが不利になる行為を行うことは競争政策上、厳しく制限されています。そうでないと、MVNO事業者は自由にビジネスができなくなりますからね。
ただし、自前の回線でない以上、MVNO事業者は価格設定やサービス面において、100%の自由度を発揮することができないという弊害もあります。
楽天の格安SIM事業(楽天モバイル)や、買収したフリーテルは、主にドコモから回線を借りてサービスを提供しています。
楽天はフリーテルの買収で格安SIMのシェアを広げることに成功したわけで、今回楽天は、わざわざ大きなリスクを取って、自らインフラを所有する事業者になることとしました。
3社寡占モデルが一番都合が良い
前述の通り、総務省がLTE周波数配分の際、4社への振り分けで企業間競争を促すはずが、配分後にソフトバンクがe-モバイルを買収したことに激怒し、e-モバイルは、ソフトバンクモバイルではなくヤフー傘下にしたのですが、実質、孫正義氏が牛耳っているのは同じで、結局はこのときから携帯事業業界は3社寡占状態がずっと続くことになりました。
3社寡占モデルがちょうど良い状態……このことで携帯料金は高いままで、ずっと維持されてきました。
NTTドコモで「iモード」を立ち上げ、いまはドワンゴ社長となっている夏野剛氏によれば、ガラ系の時代と違ってスマホの時代になり、スマホはさほど品質や機能に差が出るものではなく、ましてや3社が同じiPhoneを取り扱っている状況では、ユーザーにとってはどこのiPhoneを使っても性能に差がないので、結局は3社のシェアは均等に3分の1ずつになるのだと指摘しています。
ドコモとau(KDDI)の後発だったソフトバンクは、シェアが3分の1になるまでは価格競争を仕掛けて投資を盛んに行いましたが、シェアが3分の1になった時点で投資をやめ、携帯価格は安くなることなく高止まりすることになりました。
携帯事業において、さすがに1社独占は独禁法の手前もあり、2社でも競争原理としては市場の同意を得られないでしょうが、3社だとそれなりに競争原理が働くと見られる、ちょうど良い状況となっているというのが、マーケット分析のプロの見方です。