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株価10倍を達成した丸和運輸機関の「二匹目のドジョウ」となりうる運送関連銘柄とは?=栫井駿介

「桃太郎クイックエース」は個人事業主を利用した画期的なビジネスモデル

しかし、私は遠州トラックと丸和運輸機関には決定的な違いがあると考えます。

1つは、Amazon配送の運営方式の違いです。

もともと両社とも企業物流の会社で、ヤマト運輸や佐川急便のような「宅配」のノウハウを持っていません。これが、デリバリープロバイダの評判がすこぶる悪い原因となっています。

遠州トラックは自社ドライバーを活用して宅配事業にも乗り出しているようです。現段階ではあくまで「副業」ということでしょう。

一方の丸和運輸機関は、「桃太郎クイックエース」という仕組みを採用しています。これは、配達を自社のドライバーが行うのではなく、契約した個人事業主が行うことです。

これはコスト構造を考えると画期的なことです。自社のドライバーを使っていたのでは増え続けるAmazonの需要にいつか対応できなくなります。その時は新たに社員を雇わないといけないのですが、日本の雇用制度では一度雇うとなかなか解雇できません

人を雇うと、社会保険料などのコストも大きくかかります。トラック輸送のような労働集約型産業ではこれが非常に重くのしかかって来るのです。

一方、個人事業主と契約するという形を取れば、彼らに支払う料金は歩合制なので、人件費を変動費化できます。つまり、需要が増えているときはどんどん契約する個人事業主を増やし、需要がなくなったら発注しなければ余計なコストはかからないで済むのです。

(もちろんこれは、コンビニのフランチャイズと同じ問題を抱えています。「夢」を掲げた個人事業主の酷使という側面を忘れてはいけません。)

Amazonに依存する危険性

Amazonに需要を依存することは、非常に大きなリスクとなり得ます。もし、Amazonが自前の宅配網を構築できたら、デリバリープロバイダは簡単に「サヨナラ」されてしまうのです。

実際に、Amazon自ら個人事業主と契約するなど、自前化の動きは着々と進んでいます。

もしそこまでいかなくても価格交渉は至難の業です。料金を上げるどころか、Amazonはどんどん値下げ圧力をかけてくるでしょう。これで佐川急便は撤退し、ヤマト運輸も売上は増えど利益は上がらない「豊作貧乏」に陥りました。

【参考】ヤマト赤字転落、株価は1年で半減へ。Amazonに媚びない3つの改革で業績復活なるか?=栫井駿介

Amazonとの取引は、一時は利益につながったとしても、その後利益は上がらず突然契約を解消されてしまう大きなリスクと背中合わせなのです。それを自社リソース(コスト)でやるとはどういうことか、もう一度よく考えなければなりません。

Next: 丸和運輸機関が大きな成長をみせた、もうひとつの理由とは?

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