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円安が日本経済に好影響を与える時代は終焉した?その背景にある、日本企業の変化=柴山政行

これまで円安は輸出が増えて日本経済にプラスになると考えられていました。しかし、円安がかならずしも輸出企業の価格優位性に繋がらなくなっているようです。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)

「円安は輸出企業に有利」という常識が揺らいでいる?

2004年から2014年は円高にもかかわらず、1.7%の輸出増加を維持

2019年11月16日の1面で、「揺らぐ『円安歓迎論』」というインパクトのあるテーマの記事が掲載されていました。
※参考:揺らぐ「円安歓迎論」 輸出の連動弱く‐日本経済新聞(2019年11月16日公開)

日経一面ですから、日本経済全体に関係すると考えられているわけですね。

これまで、多くの方がご存知のとおり、円安は輸出先での価格競争力が上がるため、輸出が増えて日本経済にプラスになると考えられていました。

しかし、紙面のグラフにもあるとおり、日本経済全体への影響としては、かならずしも円安が輸出企業の価格優位性に繋がらなくなっているようです。

一般的なケースは次のような感じになります。

(説例1)1万ドルの商品を為替レート110円で輸出した。
→海外への輸出価格・・・1万ドル×110円=110万円

(説例2)1万ドルの商品を為替レート120円で輸出した。
→海外への輸出価格・・・1万ドル×120円=120万円

説例2のように、1ドルあたりの円相場が上がれば、ドル高円安という状況なので、ドル建ての販売価格は円に転換した時に10万円増えます。

見方を変えれば、同じドル建てなら円での取り分が増えるし、もしも同じ110万円で輸出するなら、110万円÷120円=9,166ドルと、1万ドルより1割近い値下げが可能となり、価格競争力の点で非常に有利になります。

こういった側面の効果が強いため、輸出を主な事業のモデルとしている企業では業績に追い風となっていました。

日本では輸出企業の存在感が大きいので、円安は日本全体の景気を底上げする効果があったのです。

それが、さいきんでは少し雲行きが怪しくなってきた、という話なのですね。

たとえば、2004年から2007年は15%の円安だったため、実質輸出は3割弱伸びました。

しかし、2011年から2014年は1割強の円高であったにもかかわらず、1.7%輸出増加を維持していました。円高になれば輸出は減るだろう、というのが従来の見かたでしたが、そのセオリーとは異なる動きを見せたのです。

背景には、製造業の海外移転が進んだこと、付加価値の高い製品にシフトして価格競争から距離を置くビジネスモデルに変化していること、等が挙げられます。

対照的に輸入の存在感が高まっており、スマートフォンなどの電話機は年2兆円規模の輸入があります。

東日本大震災後は原子力発電所の運転停止があって液化天然ガス(LNG)の輸入が増え、2011年には31年ぶりに貿易赤字となりました。

円安は輸出が有利になり輸入が不利となる、円安は輸出が不利になり輸入が有利となる。

そして、全般的には輸出の方がウェイトが高いので、円安は景気を刺激し、円高は景気を委縮させるというイメージが長らく定着していましたが、最近の傾向を見るにつけ、単純に「円安だからウェルカム!」という話しではなくなってきたことが伺えます。

市場の動きは、ますます多様化しているようですね。

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image by : Novikov Aleksey / Shutterstock.com

時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年11月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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