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楽天「送料無料」騒動で客離れ加速。なぜAmazonやYahoo!と差がついたのか?=栫井駿介

金融事業で儲かっても「楽天市場」が重要な理由

これだけ楽天に毒されている私ですが、最近はポイントが貯まってもあまり楽天で買い物をしなくなりました。

最大の理由は、「わかりにくい」「使いにくい」というものに加えて「欲しい物がない」ということです。

ネットショッピングをしようと思って、まず訪れるのがAmazonです。すぐに欲しい物が見つかりますし、最安値探索をする必要もありません。レビューも豊富で、明らかな割引目的のレビュー(「すぐに到着しました!」など)が多い楽天よりも有用です。

さらに、冒頭のワークマンのように、出店者側の知名度が上がれば、彼らは楽天から「卒業」することになります。楽天だと手数料を取られますから、ネットショップを自社で構築できるならそのほうが「お得」になるのです。

その結果、楽天に残るのは自社だけではマーケティングが難しい小規模な業者、訪れる顧客はポイントにうるさい「ケチな客」ばかりということになり、まさに露店が連なる「青空市場」のような状況になっているのです。

そこでしか使えないポイントを持っていても仕方がありませんから、あえて銀行や証券の口座を作ろうとは思わなくなります。

したがって、いくら金融事業で儲かっていると言っても、楽天経済圏がポイントを軸に形成されていることを考えると、楽天グループとしての肝はやはり「楽天市場」なのです。

ECサイト運営で鍵を握るのは「物流」だ!

私は半分「卒業」してしまいましたが、それでも小規模な出店者や、あえてそこで買い物をしたい消費者にとって楽天は不可欠なものです。知名度(検索優位性)とポイントの力は非常に大きいと言えます。

しかし、楽天もそれに甘えてばかりもいられません。ライバルのヤフーショッピングは出店の無料化を打ち出し、楽天の牙城を切り崩しにかかっています。

海外勢でもAmazonはもとより、カナダ発の「Shopify」という簡単にECサイトを立ち上げられるサービスも上陸しています。まさに、領地の奪い合いが起きているのです。
※参考:アマゾンキラー、ショピファイ 世界で100万社超導入 – 日本経済新聞(2020年1月23日配信)

そんな時に、出店者の反感を買う送料無料化はいただけません。

彼らはこぞって他のサービスに流出してしまう可能性があります。ヤフーはその隙を抜け目なく突いてくるでしょう。

送料無料化の前に楽天がすべきことは、物流網を整備することです。Amazonがあれだけシンプルな注文ができるのは、先に倉庫などの物流網を作ってしまったからです。

Amazonの出店者は、商品を倉庫に預けてしまえばあとは注文があればAmazon側が発送してくれ、運営がとても楽になります。これがあるからこそ、手数料が高めでも出店したい業者が次々に現れるのです。

最近になって楽天もようやく物流網の整備に取り掛かったようです。2,000億円を投じて自前の物流網を整備しようとしています。楽天の自社発送は現在10%程度ということですが、2021年には50%にまで引き上げるとしています。
※参考:楽天・三木谷社長が語る送料無料ライン全店舗3980円以上を行う理由と今後の物流戦略 – ネットショップ担当者フォーラム(2019年8月7日配信)

楽天が行うべきことは、送料の負担を出店者に押し付けることではなく、発送の負担を自ら担って、出店者をより楽にすることだと思います。

これとサイトの改善ができれば出店者が増え、この先もオンラインモールの雄としての立ち位置を確立していけると考えます。

Next: ZOZOを手本にすべき? 楽天はネットショップの覇権争いに生き残れるのか…

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