fbpx

ジョブ型雇用を恐れる中高年が見逃している日本型雇用の悪習。「社員は家族」が低賃金の温床に=原彰宏

「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の違いとは

「ジョブ型」「メンバーシップ型」について、もう少し細かく見てみましょう。

今までの日本の労働のあり方を「メンバーシップ型」と表現しています。これは、新卒一括採用による総合的スキルを求められる労働形態と言われています。終身雇用を前提に総合職を採用し、配置転換しながら経験を積ませる日本型雇用の典型です。

職務を限定せずに企業のメンバーとして迎え入れ、職種や勤務地、時間外労働に関しては会社の命令次第という日本独特の正社員雇用スタイルといえます。

視点を変えれば、会社に行くことで給料がもらえる。会社にいる時間で給料の額が変わる……この「メンバーシップ型」を「時間売り」労働だと見ると、テレワークでは実際にどれだけの時間を会社業務に費やしているかが把握しづらいというのが、出社義務復活の前提となっているようです。

どこまで会社拘束時間とみなすのかが区別しづらいからテレワークはよくないとするのか、あるいは働き方の多様性からテレワークを認めることで、評価制度を変更しようとするのか。

考え方のアプローチが違うことで、結果は異なってきます。

ジョブ型労働に否定的な人の考え方

企業がグローバル化し、海外では「ジョブ型」が主流となっているとは言え、日本社会に馴染むまでには考慮しなければならないこともあるでしょう。

「ジョブ型」労働に否定的な立場の人には、先程も述べたように、「能力主義で淘汰される」とか「欧米式評価でドライに切り捨てられる」といった印象を持っているようだと指摘しました。

給料は生活給か。残業が減って手取り額が減ることにより、住宅ローン返済が厳しくなった家庭もあります。給料が生活給であることから、実力で給料の額が決められることに抵抗感を感じるのはわかります。

そもそも、なんのために仕事をしているのでしょう。「生活のため」「家族を養うため」……それは答えとしては「正解」でしょうが、そのために「能力給重視の給料システムに反対」というのはどうでしょう。

「生活のために能力を磨こう」という発想にはならないのでしょうか。

「メンバーシップ型」労働のひとつの側面でもありますが、「簡単にクビにはならない」という点がメリットに挙げられるところがあります。

一方で、会社都合でのジョブローテーションは受け入れなければなりませんし、ある意味で従業員としての「我慢」のうえに給料があるという考え方もできますね。

Next: 低賃金の原因に?メンバーシップ型を守ってきた労働組合の在り方

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー