業績も良く、株価も大きく伸びていたエムスリー<2413>。一時は1万円にも到達しましたが、株価は下落を続けています。なぜここまで下がるのでしょうか。過去に投資のプロたちが分析した内容から、今後の流れから予想してみましょう。
「成長企業」といわれたエムスリーが、なぜ株価が悲惨な状況に?(2024年5月18日)

出典:マネックス証券
PERの推移を見ると、一時期業績予想を出していなかったのでグラフ(赤線)が切れていますが、業績予想を取り下げる直前でPER125倍という数字に。平均的なPERが15倍と言われていますから、いくら成長企業といっても125倍は高すぎるということです。
それだけ期待が大きかったということですが、このPERで手を出すのは難しいという現実がありました。成長企業であればPER40倍や30倍でも妥当と言える数字ですが、株価の下落はそこで止まらずに、直近ではPER25倍というところまで下がっていて、もはや成長企業のバリュエーションとは言えない数字になっています。
エムスリーの優れたビジネスモデル。成長の最大要因は?(2023年12月18日)
出典:M3.com
マッキンゼー出身の谷村格氏が2000年に創業したエムスリー。わずか創業の4年後にマザーズへ上場します。この超スピードの上場に至った理由が、主力事業の「MR君」の運営です。
医師も使っているサービスですが、医師が基本無料、MRなど製薬会社側が有料で、その使用料は年間1.5億円。トップクラスになると、年間10億円にも達するようです。なぜ、製薬会社は莫大な使用料を払って「MR君」を使うのでしょうか?
変わってきた日本のM&A。今後は同意なきTOBが増える?(2023年12月14日)

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2023年10月7日、福利厚生代行大手のベネフィット・ワンに対して、エムスリーと第一生命ホールディングスの2社が株式公開買付(TOB)を実施すると表明。今後の展開に注目が集まる中、日本のM&Aが変わりつつあることを示す象徴的な買収劇になりそうと予想されていました。
編集部注釈:2024年3月1日にTOBが不成立になったことが発表されました。
※参考:エムスリー、ベネワンTOB不成立 第一生命対抗で – 日本経済新聞(2024年3月1日配信)
従来の日本では会社側の同意を得ないままTOBを実施するケースは少なかった現状があります。また他社がTOBを行っているのに対して、対抗してTOBを実施するという事例もあまり多くありませんでしたが、今回の件のような日本のM&Aの慣習は近年大きく変わりつつあるようです。
エムスリーのビジネスモデルを分解して解説。いまは割安なのか?(2022年7月2日)
アナリストが株価が下がった理由と、それを上回る期待値がこの株にあるのかどうか深堀りします。エムスリーの株を購入するか否かの判断材料として重要であると思う点は、下記の3点です。
- 医療現場のデジタルツールを使った効率化支援事業をどこまで伸ばせるか
- 幅広く行っている事業間のシナジー相乗効果をどこまで出すことができるか
- そのポテンシャルがこの企業にどれぐらいあるのか
これらが判断材料になると考えます。今回はこういったところを深堀りしていきたいと思います。まず最初に、なぜエムスリーの株価が落ちてきたのでしょうか。市場全体の下げ感にもまれてるだけでなく、実はもう1つその理由があります。
なぜ金融引き締めが必要なのか?買った株が下がったときの対処法(2022年1月13日)

マザーズ指数 日足(SBI証券提供)
エムスリーはもともとすごい成長企業で、医療関係のデジタルトランスフォーメーション(DX)を担っており、コロナの影響でさらに重要度が増し、大きく成長しました。業績はなんら問題の無い会社です。
マクロ的な金融経済の背景を見ると、この下落には確かな理由があります。アメリカ連邦理事会(FRB)の議事録が公開され、それによると、金融引き締めの方向に舵を切り始めているということが明らかになりつつあるのです。
かつての日本の家電市場のようなレッドオーシャンは共倒れする?(2019年10月8日)

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かつて日本の家電市場は数えきれないほどの企業が参入し、激しい価格競争を繰り広げました。長期投資には、それと対局のブルーオーシャンビジネスが最適です。特にエムスリーはブルーオーシャン企業といえるでしょう。
「ネットMR」=ネットを使った医師向け医薬情報提供事業では独壇場。なぜなら「ビジネスモデル特許」によって他社が参入できないような高い障壁を作ったからです。
「医療×IT」分野で躍進するエムスリー、経営は99点?
日本国内で成長産業を見つけるのは簡単ではありませんが、医療産業が数少ない成長分野の1つであることは間違いないでしょう。高齢化で医療を必要とする人が増え、病院はいつも高齢者であふれかえっています。
ともに成長産業である「医療×IT」を担う企業があれば、成長余地は相当大きくなるはずです。しかし、規制のせいなのか、医療の本丸に切り込む企業はなかなか見当たりませんが、一人勝ちしていたのがエムスリーです。
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