「基準が失われ始めた世界」と「打つ手のない日本」
FRBが利下げに動き、9月のFOMCでの利下げも確実視されていることもあり、多くの国が予防的利下げによって自国通貨高回避に動き出している。こうした動きは日本に逆風となって吹き付けることになりそうだ。
まずは、米国のみならず周辺国との金利差縮小によって「円調達+外貨運用」というキャリートレードの魅力が薄れることで円安圧力は弱まることが想像される。さらに、通貨切り下げ競争によって市場の混乱が起きればこれまでのキャリートレードの巻き戻しによる円高圧力が高まることになりかねない。
こうした事態を防ぐために日銀も予防的利下げ、金融緩和に動きたいところだが、無い袖は振れない状況にある日銀は動くに動けない。
マスコミは「比較的安全な通貨である円が買われる展開」と繰り返しているが、実際には円高を防ぐ手立てを失った「調達通貨円」の借り手が円高による負債の増大を恐れて円の返済に動き出していると考えるべきだろう。
対中強硬派が主導権を握りつつあるトランプ政権がこれまでの基準を無視して中国を為替監視国に指定し、トランプ政権の圧力を受けてFRBが「金融政策は経済指標次第」というこれまでの基準を放棄しかねない状況に追い込まれ、中国が習近平体制を維持するために対外債務の拡大を招くリスクを顧みずに元安誘導に踏み切る…。ここにきて世界は明確な基準を失い始めたようだ。
「基準が失われ始めた世界」と「打つ手のない日本」。暫くは市場の混乱が続く可能性を考えておいた方がよさそうだ。
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- 基準を失った世界と打つ手を失った日本(8/12)
- 期待通りの結果が招いた期待しない結果 〜 懸念されるFRBの日銀化(8/5)
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『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』(2019年8月12日号)より一部抜粋
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