外食産業の主要23社のうち、17社が前年同期比での増益を確保したという記事がありました。そこで、ゼンショーHDの決算から5年間での変化を見てみましょう。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)
損益分岐点からの余裕利益分を算出する「損益余裕率」
ゼンショーHDなど外食大手のうち7割が営業増益へ
14日に外食大手の決算が出そろいました。
8/15に公開された日経新聞の記事によると、主要23社のうち、74%にあたる17社が2019年度第一四半期(5社は第2四半期、1社は第3四半期)において前年同期比での増益を確保しました。
値上やメニュー改善などの商品戦略が受け入れられると同時に、コスト削減も進んだということです。
米中貿易摩擦などの影響で上場企業の6割が最終減益となりましたが、外食全社の営業利益は約3割増え、ここ5年では最も高いそうです。
近い将来のトピックとしては、10月に予定される消費増税の影響が注目されるところです。
外食全体の営業利益は33%増の374億円とのことです。
たとえば、すき屋やなか卯を運営する大手のゼンショーホールディングスは、売上高1,533億円で前年同期比6%アップ、営業利益も44億円と前年同期比50%アップになっています。
ゼンショーは、過去5期分の業績推移を見ても、なかなかの好調ぶりを見せています。
ここで、4年前(2015年3月期)と直近の事業年度(2019年3月期)における、同社の売上総利益(粗利)と経常利益を比較してみましょう。
【2015年3月期】
売上総利益・・・291,617百万円
経常利益・・・・・2,875百万円
【2019年3月期】
売上総利益・・・346,453百万円
経常利益・・・・ 18,211百万円
なお、売上総利益から経常利益に至るプロセスで加減すべき項目、すなわちつぎの3つの項目の合算額を「固定費」と仮に定義いたします。
【2015年3月期】
(1)販売費及び一般管理費289,119百万円
(2)営業外収益・・・・・・2,728百万円
(3)営業外費用・・・・・・2,351百万円
合計(固定費)・・・・・・288,742百万円
【2019年3月期】
(1)販売費及び一般管理費327,619百万円
(2)営業外収益・・・・・・1,624百万円
(3)営業外費用・・・・・・2,247百万円
合計(固定費)・・・・・・328,242百万円
もしも、売上総利益(粗利益)が固定費と同じ場合は、利益がゼロ、つまり損益分岐点となります。
たとえば2015年3月期ならば、売上総利益が固定費と同じ288,742百万円だと、ちょうど経常利益がゼロとなってしまいますね。
したがって、当時のゼンショーは、黒字を確保するためには売上総利益を288,742百万円以上あげる必要がありました。
じっさいの売上総利益が291,617百万円あったため、固定費288,742百万円を2,875百万円上回っていた、いいかえるとそれだけの余裕分があったことになります。
そこで、この超過分2,875百万円÷売上総利益291,617百万円≒0.99%は「損益余裕率」と呼ばれ、どれくらいの余裕があるかを示す指標となるのですね。
当時の売上総利益があと0.99%下がったら、利益はゼロになっていまい、それ以上下がったら赤字になるデッドラインを示しています。
そして、2019年3月期を見ると、損益余裕率は(346,453-328,242)÷346,453≒5.26%となり、2015年3月期の0.99%よりも大幅に改善されました。
収益構造はよくなっているようです。
この「損益余裕率」の考え方は、現在の会社の業績における余裕度合いがわかるので、とても便利な指標となります。
ご自身の会社でも、時間のある時に算定してみてください。
image by : StreetVJ / Shutterstock.com
『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年8月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
時事問題で楽しくマスター!使える会計知識
[無料 週刊]
旧題「日経でマスター!使える財務分析」。決算書、会計知識、財務分析を、日経新聞等と絡めて解説!効果…(1)お金の流れがわかる(2)企業診断ができる(3)株式で利回り10%以上が可(4)ビジネスで差がつく(5)日経新聞が深く読める!→サンプルは発行者サイトで!