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ヤマト赤字転落、株価は1年で半減へ。Amazonに媚びない3つの改革で業績復活なるか?=栫井駿介

ついにAmazon向けを値上げ!

しかし、これだけでは人件費が増えるだけになってしまいます。まだ改革は終わりません

働き方改革と同時に取り組んだのが、運賃の値上げです。特に、大口顧客の値上げを断行しました。大口顧客とは、包み隠さずに言えばAmazonのことでしょう。今、物流業界はAmazonを中心に回っていると言っても過言ではありません。

かつて佐川急便(SGホールディングス<9143>)がAmazonの配送から撤退した時、ヤマトHDはその空きを引き受けた経緯があります。その結果、皮肉にもSGホールディングスの利益率は上昇した一方、ヤマトは利益の低迷に苦しむことになったのです。

【関連】「佐川」は「ヤマト」に勝てるのか?今年最大の大型上場(SGHD)のポイント=栫井駿介

Amazonと言えば、取引業者に対して手厳しいことで知られます。佐川は値上げを巡って折り合わなかったと言われますが、今回はついにヤマトも値上げに舵を切ったのです。

Amazonもさすがにヤマトと喧嘩別れしては困るので「撤退」とはいきませんでしたが、それでも少しずつ発注を減らされているものと思われます。「大口法人」の取扱数量は、値上げ以降確実に減少しているのです(グラフ緑線、赤の単価と逆行する動き)。

これが直近の業績悪化の一因になっていることが否定できません。

出典:ヤマトHD 2020年3月期第1四半期決算説明資料

出典:ヤマトHD 2020年3月期第1四半期決算説明資料

Amazonの顔色を伺う必要はない

ヤマトが復活するには、再び値下げしてAmazonの需要を取り戻すべきなのでしょうか。

私はそれは正しい戦略ではないと思います。なぜなら、働き方改革前に逆戻りしてしまうからです。配達のクオリティや従業員のことを考えても、これ以上負荷をかけないのが正解だと思います。

Amazonが代わりに急いでいるのが、「デリバリープロバイダ」と呼ばれる地域限定業者や、「Amazonフレックス」と呼ばれる個人事業主です。このような手段を通じて、将来的に宅配網の「自前化」を図っているのです。

Amazonには義理も感謝もなく、純粋に損得で動いていることがよくわかります。このままAmazonに付き合っても、生かさず殺さずの状態に置かれ続け、ある時急に切られてしまうかもしれません。

ヤマトは最大手らしく、どっしり構えていれば、やがてAmazon以外の需要が駆け込んで来るでしょう。ネット通販市場はまだまだ拡大しています。デリバリープロバイダの評判も決して芳しくなく、ヤマトに頼みたい業者はまだまだ現れるはずです。

「安心、安全、信頼」は長く事業を続ける上で不可欠な要素です。

Next: どうすれば利益は伸びる? ヤマトが取り組むべき3つの秘策

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