中国におけるTOTOは「フェラーリ」
日本では広く普及しているTOTO製品ですが、中国では「高級ブランド」として名を馳せています。それは利益率にもあらわれていて、日本事業の営業利益率が5.7%なのに対し、中国事業は19.4%にものぼります。
中国におけるTOTOは、一般の人には手に届かないような「お高く止まった」商品なのです。これでは、経済状況が悪化すれば業績が落ち込んでしまうのはある意味当然と言えます。
TOTOとしても、経済状況で需要に増減こそ生まれますが、一方ではブランド力がある限り、特に営業努力をしなくても自然と高値で売れる状態なのです。
例えるなら、自動車のフェラーリでしょう。フェラーリは特に宣伝しなくても高い価格で売れ、利益を稼ぎ続けます。中国におけるTOTOはそのようなポジションにあります。
そう考えると、足元で業績が鈍化したとは言え、焦って何かをしなければならない状況ではないようにも見えます。中国事業の売上は全体1割程度なのに対し、営業利益は3割を稼ぎ出します。いわば、大きな苦労をかけずに業績の底上げを図れているのです。
高級ブランドゆえ「トイレ革命」の波に乗れず
一方で、中国のトイレ事情は大きく変化しています。習近平国家主席は、2015年に「トイレ革命」を宣言し、トイレの近代化を訴えました。
中国の広州トイレは「ニーハオトイレ」と揶揄されるように、隣との間に仕切りのないような前時代的なものが一般的でした。一般家庭のトイレも大差なかったと想像できます。習主席はこれを大きく変えようとしたのです。
そこで参考になるのが、日本のトイレです。世界的に見ても清潔で、機能も充実した日本のトイレを中国で普及できれば、「トイレ革命」は完結に向かうはずです。TOTOの株価上昇もそれを見越してのことだったと思われます。
しかし、TOTOは必ずしもその波に乗れませんでした。それは、TOTOが高級ブランドという地位を確立していたが故に、普及帯にまで事業を拡大できなかったことが背景にあると考えます。
高級ブランドが価格を抑えた商品を出そうとすると、高級ブランドだと思って買った人たちを「裏切る」ことになってしまいます。150万円のフェラーリが売り出されたとしたら、ファンはとてもがっかりしてしまうでしょう。
TOTOはこのように、ブランドの維持と普及との間でジレンマに陥っているのです。