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なぜTOTOは中国で天下を取れないのか?「トイレ革命」の波に乗れず業績低迷=栫井駿介

自前主義を貫くべきか?ウォシュレット普及へ本気度が試される

もちろん、TOTOだって何も手を打っていないわけではありません。量販ブランドとして「ウォシュレットプラス」を立ち上げ、最高級品の1/4程度の価格で売り出しています。
※参考:「ウォシュレット」に量販ブランド TOTO – 日本経済新聞(2018年7月18日配信)

ただし、私はこれでは戦略として弱いと思います。普及させるにはもっと安い価格にしなければなりませんし、一方で「高級ブランド」とのジレンマを抱えたままです。

これを突破するには、TOTOに受け継がれてきた自前主義からの脱却が必要になると考えます。TOTOはこれまでM&Aに手を出したことがありません。

具体的には、現地企業の買収や資本提携により、最低限の技術を供与して低価格で販売することです。これにより、TOTOだけでは難しい中国全体への販売網の強化や製造力の強化が図れます。何より、ビジネスで重要なスピードを身につけることができます

例えば、インドで40%ものシェアを獲得したスズキ<7269>も、政府との合弁企業「マルチ・スズキ」を立ち上げることで現在の地位を築きました。このようなM&Aは、単なる規模の拡大とは異なります。

その際、ブランドは「TOTO」ではなく別ブランドとします。ブランドを分ける手法は、自動車で良く用いられます。トヨタも、普及ブランドは「トヨタ」、高級ブランドは「レクサス」という形にしています。

こうすれば、多くの中国人がウォシュレットの良さを分かってもらえ、普及率は上昇するのではないかと考えます。同時に、お金がある人が引き続き高級ブランドのTOTOを買えば、今の高利益率も維持できるということになります。

もちろん、自前主義もいいところはあり、また中国企業と協力するのは簡単なことではありません。しかし、そこまでやるからこそ、企業の存在意義が高まると考えます。楽な戦略などどこにもありません。

中国による「爆買い」の期待は剥がれて株価は低迷していますが、TOTOの潜在力はまだまだこんなものではないと思います。今後の戦略に期待していきたいと思います。


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image by:testing / Shutterstock.com
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2019年10月21日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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