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データセクション史上初の認定を受けた、産業競争力強化法のメリットとは?=柴山政行

ビッグデータ分析を手がけるデータセクションが、22日に自社株を対価にした買収について産業競争力強化法の認定を受けたと発表。興味深いこの内容を紹介します。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)

データセクションが22日、自社株を対価にした企業買収を発表

チリ法人Jach社の株式の取得及び当該株式取得のための第三者割当

2019年11月23日の日経13面で、ビッグデータ分析を手がけるデータセクションが、22日に自社株を対価にした買収について産業競争力強化法の認定を受けたと発表しました。

発表内容がなかなか興味深いので、ここで一部引用させていただきます。

(開示事項の経過)産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定に関するお知らせ

当社は、2019年11月14日付『「FollowUP(フォローアップ)」のグローバル展開に向けたチリ法人Jach社の株式の取得(子会社化)及び当該株式取得のための第三者割当による新株式発行(現物出資)に関するお知らせ』において、Jach Technology SpA(以「Jach Technology社」といいます。)の株式の現物出資を内容とする第三者割当による新株式発行(以下「本第三者割当」といいます。)を行う旨開示しており、経済産業省から産業競争力強化法第23条第5項の規定に基づく「事業再編計画」(自社株式を対価としたM&A)の認定が受けられることを本第三者割当の実行のための条件の1つとしておりましたが、本日、当該認定を受けましたので、下記のとおりお知らせいたします。

当該計画は、同社株式を対価として、チリで小売店向けにカメラ映像の画像解析技術を利用した解析サービスを行うJach Technology社の発行済株式の一部(議決権比率100%)を取得し、これを買収するものです。当該事業再編を通じ、マーケットの拡大が見込まれる国への進出や、小売の様々な業態に合わせたサービスの提供を開始し、サービスの拡充、マーケティングの支援等、新たな施策の展開により、更なる企業価値の向上を目指します。

本件は、産業競争力強化法上、初の株式対価M&Aによる事業再編となります。

データセクションの発表記事より

以上の内容を整理しますと、ポイントは次の3点になります。

1.データセクションが、チリのJach Technology社をM&Aで100%子会社化する。
2.その際、Jach Technology社の株式買収の対価としてデータセクション株を発行する。
3.これら一連の取引を、同社が初めて産業競争力強化法に基づき認定を受けた。

それぞれ検討致しましょう。

1.データセクションが、チリのJach Technology社をM&Aで100%子会社化する。

データセクションは、AIを用いたビッグデータ解析技術等で強みを持っています。

いっぽう、Jach Technology社は、カメラ映像の画像解析技術を活用した小売店舗向け顧客行動分析・提案サービス「FollowUp」の提供を主たる事業としています。

Jach Technology社はチリにおいて自らサービスを提供すると同時に、世界18か国において、ローカルパートナーと提携することによりFollowUp事業を展開しているそうで、現在、データセクションはJach社のローカルパートナーとしてFollowUp事業の日本におけるディストリビューターの地位にあります。

こうしたパートナーシップを背景として、その関係強化と事業のさらなるシナジーを見越して、今回のM&Aが成立する運びとなったのですね。

2.その際、Jach Technology 社の株式買収の対価としてデータセクション株を発行する。

親会社となる企業が新株を発行し、それを対価として子会社の株式を100%取得する「親会社の株式を対価としたM&A」です。新株の発行は、通常の増資と同じく、仕訳の貸方に資本金(場合によっては一部資本準備金)が計上されます。

(借方)子会社株式×××
(貸方)資本金×××(または一部:資本準備金×××)

3.これら一連の取引を、同社が初めて産業競争力強化法に基づき認定を受けた。

産業競争力強化法はいわゆるアベノミクスの一つです。日本経済の再興のため、産業競争力の強化を目的として、平成26年1月20日に施行されました。

過剰規制、過少投資、過当競争など、日本にある経営資源の有効活用がなかなか思うようにいっていない現状を改善することに意義があるとされています。

生産性の向上を目指す事業活動について計画を立て、大臣が認定した計画に対して、税制優遇、金融支援等の措置を講じるものなのですね。

今回のデータセクションにおける事案は、平成30年(2018年)7月の改正法に基づき、認定を受けた初のケースということになります。

認定を受けることによるメリットとして、次のように同社は発表しています。

「今回の認定により、当社において、当該事業再編に対する会社法の特例措置及び登録免許税の軽減措置を受けることが可能となります」

会社法の特例措置は、一定の場合における株主総会の決議を省略できる点で、この事務コスト削減効果は無視できないものと考えられます。また、税務上の軽減措置も見逃せないメリットですね。

ちなみに、同社が発表した22日以降の株価(終値)は、次のとおりです。

22日598円
25日609円(高値615円)
26日610円(高値622円)
27日615円(高値624円)
28日607円(高値615円)

やはり、企業発表を好感してか、短期的に上昇していますね。

今後のデータセクションのグローバル展開がどうなるか、興味深いですね。

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image by : Novikov Aleksey / Shutterstock.com

時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年11月29日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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