株式市場は空前の金融緩和により高止まりを続けますが、新型コロナウイルスの猛威は息を吹き返しています。今の株価がおかしいという言う人もいれば、市場は常に正しいという言う人もいます。個人投資家はこの相場にどう立ち向かうべきでしょうか。『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
アメリカの1日の感染者数は最多を更新!気を抜けば間違いなく再拡大する
株式市場は空前の金融緩和により高止まりを続けますが、新型コロナウイルスの猛威は息を吹き返しています。
アメリカでは6月24日の新規感染者が4万人を超え、1日としてはこれまでの最多(4月24日)を更新しました。検査数が増えていることも影響していると思われますが、一部の州では感染の拡大を示す「陽性率」が10%を超えるなど、明らかに感染拡大の兆候を示しています。
特に顕著なのが、これまで比較的穏やかだった南部の州です。感染への警戒感の弱さや、人種差別抗議デモの影響が要因として懸念されます。カリフォルニア州にあるディズニーリゾートは、7月17日の再開予定を延期することを発表しました。
これが意味していることは、低下傾向をたどっていた感染も、少し気を抜けば再び拡大するということです。
日本でも、緊急事態宣言が明けて約1ヶ月が経ち、東京で連日50人前後の感染者が報告されるなど、再び拡大の兆候が見られます。同じような状況が、発端となった中国をはじめ世界中で見られます。
さらに深刻なのが、中南米をはじめとする新興国です。ボルソナロ大統領がウイルス「ただの風邪」と言い切るブラジルでは感染者数が110万人、死者は5万人を超えました。8月には世界最大の感染国になると見られています。
IMF「世界経済見通しはさらに悪化、日米の株価は割高」
IMFは2020年の経済成長見通しを、4月に発表した-3.0%から-4.9%に下方修正しました。先進国では前回予想から1.9%、新興国も2.0%の引き下げです。感染の状況によってはさらなる下方修正も想定されます。経済は持ち直すどころか、刻一刻と悪化しているのです。
そのIMFが、日米の株価について「割高感がある」と警戒感を示しました。これは、企業の収益力や配当余力と照らし合わせて、割安から割高を0~100の数値で示すもので、日米はそろって割高を示す100近辺になるということです。
※参考:日米株高「実体経済と乖離」 IMF、報告書で警戒感 – 日本経済新聞(2020年6月25日配信)
株価は企業の収益力を反映するものですから、経済が縮小する中で株価が上がるのはおかしいという考え方であり、一定の合理性があります。株価が上がるほど、私たちは警戒感を強めなければなりません。
一方で、株価とは未来を反映するものです。投資家は、先々を予想して株価に織り込んでいきます。彼らの目線は、すでに終息後の景気回復局面を見ているのかもしれません。あるいは、空前の金融緩和によるバブル・インフレを想定しているとも考えられます。
将来の可能性を織り込むことを考えると、現在の株価が「おかしい」とも言い切れません。株価とはそういうものですから、「市場は常に正しい」と言う人もいます。