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ZOZO復活の兆し?アパレル各社の「ZOZOがえり」は前澤氏不在のつまらなさを埋めるか=栫井駿介

窮地に陥るアパレルは「ZOZOがえり」か

一方のオンワードですが、会社は存亡の危機に立たされています。

2020年2月期は500億円もの最終赤字を計上しました。業績不振は今にはじまったことではなく、売上高はピークから2割以上も減少していました。

同じく百貨店を中心に店舗展開するレナウンが経営破たんしてしまったことからも、中高価格帯ブランドの厳しさがうかがえます。

追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスです。ただでさえ苦しい経営環境の中で、緊急事態宣言による店舗閉鎖や外出自粛によるファッション需要の減少により、まったく売上が立たない状況になってしまったのです。

ここでオンワードは大胆な賭けに出ます。約3,000あった実店舗のうち1,400店舗を閉鎖し、将来的には売上の半分をECで稼ぐことを目指すというのです。すでに400名超の希望退職を実施するなど、着々と改革を実行しています。

そこで白羽の矢が立ったのがZOZOです。アパレルでECを目指すとすれば、ZOZOは避けては通れない存在です。前澤氏がいなくなりやりやすかったところもあるでしょうが、在任していたとしても背に腹は変えられなかったかもしれません。

それほどアパレル業界では生死をかけた攻防が繰り広げられているのです。

同じようなことが他のアパレル企業でも起きてくるのではないでしょうか。これまで百貨店に看板を掲げていれば服が売れましたが、もはやそんな時代ではありません。

若者はユニクロやジーユー、H&Mなどのファストファッションを着こなすことがオシャレとなっています。高級ブランドなら一定の需要があるものの、中途半端に値段の高いところはますます厳しさを増すでしょう。

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安泰じゃない? ZOZOの決算資料から見える「衰退」

そのZOZOですが、決算資料を見ると少し気になる点があります。

「年間購入者数」のグラフを見ると、合計数こそ減少していませんが「ゲスト購入者数」が明らかに減少しています。これは、新規顧客が取り込めていないということです。

出典:2020年3月期決算説明資料

出典:2020年3月期決算説明資料

新規顧客がいなければ、やがてジリ貧になってしまいます。この点、かつては良くも悪くも前澤氏が話題になり、ZOZOの知名度を高めたことが効果を発揮していた可能性があります。その手段を失ってしまったことはマイナスと捉えられます。

また、1人あたり購入金額を見ると、これは明らかに下降線をたどっています。顧客が増えず、購入金額も減少したとなれば当然トータルでの売上は下がってしまいます。

出典:2020年3月期決算説明資料

出典:2020年3月期決算説明資料

1人あたりの購入金額が高いということは、熱狂的なファンがいるということです。前澤氏はもともとバンドマンですから、ファンを虜にする感覚を持っていたのではないかと推測されます。
このまま1人あたり購入金額が下がってしまうと、残るのは「金にうるさいケチな客」という事になり、ZOZOタウンというプラットフォームに魅力がなくなる懸念があるのです。

このような最近の流れを見ると、やはり前澤氏がいたほうが成長性があったのではないかと思えてきます。問題も多い人ですが、これだけの企業を育てたカリスマ性はやはり確かだったと思います。

Next: 2020年に入り、新型コロナウイルスがデジタル・トランスフォーメーション――

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