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日本の経済状態は悪くない?にもかかわらず、景気減退が不安視されている理由とは=川瀬太志

要因は、トランプ大統領?

もともと、世界経済はリーマンショック以降の金融緩和によって順調に拡大してきていて、そろそろ金融の引き締めに入る時期でもありました。景気循環的にもある程度のスローダウンは予想の範囲内でした。そこに米中貿易摩擦が、景気減速を一気にスピードアップさせてしまった感じです。

トランプ大統領としては、「貿易赤字は国内産業を衰退させる。アメリカ向けの輸出で儲けている中国などの製品に関税をかけて、国内の雇用を復活させよう」というような考えを持っているのかもしれません。

しかし、すでに多くの人が指摘しているように、中国に関税をかけたとしても、米国製品が競争力を高めて米国内の雇用が激増するようなことはありません。

10~25%の関税をかけたとしても、それでもまだ中国製品の方が米国製品よりも安いものが多いと言われています。

もしそうだとすると、結局、完成品を作る米国メーカーは、10~25%高くなった中国部品を買わされるだけで、最終的にそのツケは米国消費者が支払うという構図になります。また、中国製品にはかなりの米国の製品が組み込まれています。中国向けに輸出をしている米企業は直接的に打撃を受けています。

国際通貨基金(IMF)の発表では、『米国が2,670億ドルの中国製品に25%の関税を課し、中国も相応の報復関税をかけた場合、中国の成長率は2020年時点で0.9ポイント押し下げられ、米国も0.3ポイント下がるとみる』と言っています。

すでに経済はグローバル化して、サプライチェーンは全世界に広がっているのです。

米中貿易戦争は中国だけでなくアメリカにも痛みをもたらす、ということはみんな(おそらくトランプ大統領も)わかっているでしょう。それであってももう止められないのでしょうね、大統領選挙に向けて。

貿易摩擦はこの後日本にも

ここまでのトランプ大統領の経済政策は、決して悪くありませんでした。公約通りに大型減税を実施して企業の投資意欲を上向きにさせました。アメリカ景気はさらに上振れして、景気の過熱が警戒されていたくらいです。

しかし、経済に不安定な影響を与える米中貿易戦争が収まらないとなると、企業は先を見越した投資や雇用の拡大をためらうようになります。これが『米景気、先行き懸念強く』ということにつながるわけです。

せっかく大型減税して、利上げも見送って景気が後退しないようにしてきたのに、それを自分でつぶしてしまうのでしょうかね。

トランプ大統領は中国だけにとどまらず、EUや日本とも自動車関税の引き上げ交渉を始めるだろう、とみられています。このよくわからない自分の支持者たちに向けてのアピールは来年の大統領選挙まで続くのでしょうか…。

日本は景気後退局面に入ったかどうかは、一定の時間がたって政府の判断が出てからでないと確定しません。もしかしたら「2019年1~3月期に景気後退局面に入っていた」という発表がいずれあるかもしれません。

本当は日本経済の状態は悪くないのですけどね。インバウンドは増加しているし、雇用は力強いままです。失業率は低いままだから基本的に賃金も下がらないでしょう。消費増税もそれほどの消費マインドの冷え込みにはならないとみられています。景気循環的要因の景気の減速なら、すぐに元の回復基調に戻ることもありえるはずなのです。

だから、どうかトランプ大統領、大人しくしておいてもらえないでしょうか。

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ハッピーリッチアカデミー 私的年金をつくろう』(2019年3月5日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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